ぼくが、監督に就任するとくに、きみたちに話したことばを、みんなはおぼえてくれているだろうな。
ぼくは、きみたちがぼくを監督としてむかえることに賛成なら、就任してもいい。
町長からたのまれたというだけのことでは、いやだ。そうだったろう、喜多くん。

そのとき、きみたちは、喜んで、ぼくをむかえてくれるといった。
そこで、ぼくは、きみたちとそうだんして、チームの規則をきめたのだ。
いったん、きめたいじょうは、それを守るのが当然だと思う。
また、試合のときなどに、チームの作戦としてきめたことには、
ぜったいに服従してもらわなければならない、という話もした。
きみたちは、これにもこころよく賛成してくれた。
それで、ぼくも気持ちよくきみたちと練習を続けてきたのだ。
おかげで、ぼくらのチームも、かなり力がついてきたと思っている。
だが、きのう、ぼくはおもしろくない経験をしたのだ。

まわりくどいいい方はよそう。
ぼくは、きのう星野くんの二塁打が気にいらないのだ。
バントで岩田くんを二塁へ送る。これがあのとき、チームできめた作戦だった。
星野くんは不服らしかったが、とにかく、それをしょうちしたのだ。
いったん、しょうちしておきながら、かってに打撃に出た。
小さくいえば、ぼくとのやくそくをやぶり、大きくいえば、チームの統制をみだしたことになる。