バグダッド日誌(06年6月2日) 素麺24人分を5人で

『連日50度を超える日が続いている。毎日米軍仕様の食事を食堂で楽しんでいるが、この暑さでステーキ、フライドチキン、ハンバーガーでは
さすがに皆もグロッキー気味だ。そこで先日、業務支援隊長に持ってきて頂いたつゆを使い冷や素麺を楽しんだ。
素麺は4次隊が残してくれた最高級の「揖保乃糸」、食堂からたくさんの水を調達して冷たい喉ごしを心ゆくまで味わった。
5人で24人前を一気に平らげ、食後は身動きがとれないほどだった』

バグダッド日誌(06年6月21日) 「バーコードだ!」

『昨日食堂で日系の米陸軍大佐■(※墨塗り)が話しかけてきた。ロサンゼルス五輪で柔道65キロ以下級の米国代表で出場したそうだ。
北部方面総監部で米軍連絡官を勤めた経験があり、素晴らしい柔道家と飲み仲間で、師団長になっているはずだから思いつく名前を
言ってみてくれという。「頭はバーコードだ!」(本人コメントのまま)、すかさず「■先輩」(すみません)と答えると、「その通りだ!」と言う』


「のり弁」ページも

…と、公開された文書からわかった「いい話」を紹介しましたが、文書には内容がわからないよう墨塗りにされた部分も多くありました。
バグダッド日誌やバスラ日誌で隠されたのは人名ぐらいでしたが、「のり弁当」のようなページもあります。

私が見た文書の中で、日誌との関係も含めて一番気になった墨塗りが、2006年の小泉首相による陸自撤収表明前日の報告書です。

あるページの下半分、「6月19日 ■(※墨塗り)に対する間接射撃について」というタイトルの下は真っ黒。上半分の「事案等の発生状況」
という地図を見ると、陸自部隊が派遣されたサマワのあるムサンナ県は「事案等なし」ですが、隣のバスラ県のバスラで2件、
「多国籍軍等に対する間接射撃あり。被害なし」とあります。

だから、下半分の真っ黒の部分は、バスラでの多国籍軍に対する間接射撃の説明かもしれません。間接射撃とは障害物を超えて目標を狙う砲撃で、
この場合は迫撃砲が考えられます。この日バスラは大変だっただろうなとバスラ日誌を探すと…なぜか報告書に載っていません。バグダッド日誌はあるのに。

小野寺五典防衛相は「プライバシーや外国からもらった情報、自衛隊の運用に関わるところは不開示で対応」と説明しています。
手の内は明かさないという訳ですが、報告書は毎日作るはずなのに、そもそも公開されたのは派遣日数分の半分以下です。
陸自撤収から12年近くもたつイラク派遣について、どういう基準で「機微な情報」の出す出さないを決めているのか、よくわかりません。

しかも今回の記録については、去年の2月に当時の稲田朋美防衛相が国会で野党に聞かれて「見つけることはできなかった」と答えていました。
それが後任の小野寺氏の指示で探したら出てきて、実は稲田氏の在任中に陸自で確認していたが報告していなかった、という迷宮のような話です。

「隠蔽体質」改善を

去年も陸自の南スーダンPKO(国連平和維持活動)への派遣記録について開示請求に対する隠蔽が問題になり、稲田氏や陸自トップらの
辞任につながった訳ですが、とにかく防衛省・自衛隊は海外での自衛隊の活動に関する情報を出すことにおっかなびっくりです。
森友問題で渦中の財務省と並び、文書管理のあり方が厳しく問われている中央官庁といえます。

公文書とは国民のために仕事をする政府の記録です。公開することが政府にとって都合が悪く思えても、政府の仕事に国民が理解を深め、
意見するための大切な手段なのです。

今回のバグダッド日誌やバスラ日誌へのツイッターでの好意的な反応は、情報公開を通じて政府と国民の距離が近づくいい例ではないでしょうか。
「隠蔽体質」と批判されている防衛省・自衛隊ですが、これを励みに、情報公開と、それにしっかり対応するための文書管理に前向きに取り組んでほしいと思います。
     ◇
今回公開された「イラク復興支援群活動報告」の全文は、朝日新聞デジタルの特集で読むことができます。