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4月26日 18時21分
東京・足立区の中学校で行われた性教育の授業で、避妊や人工妊娠中絶についての指導があり、東京都教育委員会は、学習指導要領に基づかないなど「問題があった」とする見解を示しました。一方で、教育委員からは「子どもを取り巻く環境が変化する中、性教育は重要だ」などとして柔軟な対応が必要だとする意見も出され、今後、性教育の在り方が議論される見通しです。

26日に開かれた東京都教育委員会の定例会で、先月、足立区立の中学校で3年生の総合学習の時間に性教育の授業を行った際、教諭が避妊や人工妊娠中絶の方法などを具体的に説明したことが報告されました。

保健体育の学習指導要領では、中学校で妊娠の経過については扱わず、避妊や人工妊娠中絶は高校で触れる内容であるとしていて、都教育委員会は、生徒の成長や発達に個人差がある中で授業で一律に指導したことや、保護者に授業の内容を十分に説明せず、意向を確認しないまま指導したことは問題があったとする見解を示しました。

一方で、教育委員からは「子どもを取り巻く環境が変化する中、性教育は重要だ」などとして柔軟な対応が必要だとする意見も出され、今後、性教育の在り方が議論される見通しです。

都教育委員会は、事前に保護者全員に授業の内容を説明し、理解を得られた生徒を対象に個別やグループで指導することは問題がないとしていて、今後、足立区教育委員会と授業の改善策を検討するほか、都内の区市町村の教育委員会にも適正な性教育を行うよう周知することにしています。

授業の内容は

東京都教育委員会によりますと、授業は、先月5日、中学3年生の総合学習の時間に保護者や地域の人にも公開して行われ、5つのクラスのおよそ160人の生徒が受けたということです。

テーマは「自分の性行動を考える」で、50分の授業の中で、養護教諭が人工妊娠中絶の現状として、10代の中絶が増加していることや、中絶手術ができる時期やかかる費用などを説明したということです。

また、避妊の必要性を理解してもらうために、コンドームやピルを入手する方法や、避妊に失敗した場合の対応として緊急避妊薬があることや処方してもらう方法も説明したということです。

さらに、授業の前には、避妊と人工妊娠中絶について、生徒全員にアンケート調査を行い、避妊の方法についてはコンドームをつけることやピルを飲むこと、安全日を選ぶこと、中絶の方法については薬を飲むことや手術することなどの選択肢を示して、正しいと考える方法を尋ねたということです。

中学校では保護者に対し、性教育を行うことについては去年6月の保護者会や学年だよりを通じて伝えていましたが、都教育委員会は、人工妊娠中絶の内容や避妊の方法を指導することなど、授業の詳細な内容を事前に説明していなかったことや、授業の是非について意向を確認していなかったことを問題があったとしています。

足立区教育委員会によりますと、授業のあと保護者から苦情などは寄せられていないということです。

今後も議論に

この授業については、先月、東京都議会の委員会で、自民党の議員が、避妊の方法を教えるなど発達段階を無視した授業で問題点があるのではないかと指摘しました。

議員の質問に対し、都教育委員会は、学習指導要領上は高校で指導する内容であるにもかかわらず、中学校で取り上げられ、保護者の理解を必ずしも十分に得ないまま授業が行われていたと答弁しました。

こうした対応について、性教育を研究する民間団体は、教育への不当な介入だと抗議し、今月、都教育委員会に対し、子どもたちを取り巻く現状を踏まえた性教育の推進を支援するよう申し入れました。

また、25日は共産党都議団などが都教育委員会に対し、学校現場の裁量を狭めたり萎縮させたりするような指導を行わないことを要請していて、性教育の在り方については今後も議論になりそうです。

足立区教育委「今後も授業続ける方針」

これについて、足立区教育委員会は「10代での予期せぬ妊娠の増加やインターネットで不確かな情報があふれる中、性について正しい知識を伝えることは大切であり、今後も授業を続ける方針だ。そのうえで、都教育委員会とも話し合い、授業の改善や保護者への周知の方法などを検討し、よりよい授業にしていきたい」としています。