前橋市で1月、市立前橋高校の女子生徒2人を乗用車ではねて死傷させたとして、85歳の男が26日、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)で前橋地裁に起訴された。


 亡くなった太田さくらさん(当時16歳)の両親は弁護士を通じて、「娘に帰ってきてほしいと願うばかり」「防ぐことができた事故ではなかったのか」などとコメントした。

 起訴状によると、事故が起きたのは1月9日午前8時25分頃。男(85)は同市北代田町の県道で乗用車を運転し、低血圧による意識障害を起こしたが、そのまま時速60〜65キロで走行。自転車で通学していた1年生の太田さんをはねて死亡させ、3年生の女子生徒に大けがを負わせたとされる。

 太田さんは事故から22日後の1月31日夜、搬送先の病院で息を引き取った。死因は、頭を強く打ったことによる低酸素脳症だった。

 「一度も目覚めることはありませんでしたが、22日間、本当によく頑張ってくれました」。両親はコメントの中で、娘に付き添った日々をそう振り返った。

 今の心境については、「亡くなったことが信じられず、受け入れることができません」「大切な我が子を失うということが、こんなにもつらく、苦しいことだとは、想像もしていませんでした」「娘に会いたい、顔が見たい、声が聞きたい、帰ってきてほしいと願うばかりです」とした。

 なぜ悲惨な事故が起こってしまったのか。防ぐことができたのではないか――。疑問と悔しさが常に頭をよぎっているといい、「刑事裁判の中で真実が明らかになることを切に願っています」と結んだ。

事故原因、意識障害…地検

 事故の原因を巡っては、高齢による認知症の可能性も指摘されていた。前橋地検は認知症の影響ではなく、持病による意識障害が事故を引き起こしたと判断した。

 地検によると、男は以前から低血圧の症状があった。意識障害が生じる恐れがあるとして、医師から「車を運転しないように」と注意を受けていた。家族からも、運転免許の返納を促されていたという。県警によると、男は対向車のミラーに接触した後、反対車線を約130メートルにわたって逆走。女子生徒2人を次々にはねたという。逮捕時の調べに対し、「気がついたら事故を起こしていた」などと供述していた。

 地検は刑事責任能力の有無を詳しく調べるため、1月26日から約3か月間、男の鑑定留置を実施。重度の認知症などは確認されず、刑事責任を問えると結論づけた。

http://sp.yomiuri.co.jp/national/20180427-OYT1T50048.html