◆格納容器の底を埋め尽くす堆積物…福島2号機の解析写真が公表

原子炉格納容器の底は、溶融核燃料(デブリ)を含むとみられる茶色い堆積物で埋め尽くされていた。
東京電力は4月26日、福島第1原発2号機で1月に行った内部調査の結果を解析、鮮明化した画像を公開した。
堆積物は高い場所で70センチを超え、周囲より高く積もっている場所が複数あることから、東電などは「デブリの落下経路が一カ所ではなく、複数ある可能性が高くなった」としている。

■3カ月かけ解析

調査は1月19日に実施。格納容器の貫通部から約13メートルのカメラ付きガイドパイプを内部に投入し、圧力容器の直下にある作業用足場の脱落場所から、先端のカメラをケーブルでつり下ろして底部を撮影した。
同日夜の発表では、燃料集合体のハンドルの一部が落下している様子が確認され、その周囲に広がっている小石状の物体をデブリとほぼ断定していた。

国際廃炉研究開発機構などは、この調査で得られた画像を3カ月かけて分析し、細部をクリアにするとともに、全体を見渡せる画像を作成した。
画像からは、小石状や粘土状に見える堆積物が、底部全体に広がっていることが確認できる。

また、ハンドルに刻印された文字のうち最初の「F2XN」の4文字が解析により特定。
Fは福島、2は2号機、Xは購入時期、Nは購入先の略称だという。
これに続く通し番号が確認できれば、落下した燃料集合体の圧力容器内での位置が特定できたが、これ以上の判読はできなかったという。

■新たな落下物も

堆積物の高さは、格納容器底部にある設備との比較で推定された。
底部には壁に沿ってドーナツ状に「ケーブルトレイ」が設置され、中にケーブル類が収納されているが、このトレイの高さが約70センチ。
画像ではケーブルトレイと周辺の堆積物との段差がはっきり確認できない部分があり、東電は「この部分で堆積物が70センチを超える可能性がある」と説明した。

また、中央付近にある制御棒駆動機構交換機の昇降台車の下部が埋もれている様子も確認され、堆積物の高さは40〜50センチとされた。
燃料集合体のハンドルの近くでは、棒状、管状、スプリング状の落下物がそれぞれ新たに確認された。

これらの見つかった場所は堆積物の高さが周囲より高いため、東電は「その真上がデブリ落下経路の一つの可能性がある」としている。
これ以外にも、作業員の出入り口の付近で堆積物が周囲より高い場所があり、落下経路が複数ある可能性が高くなった。

■取り出しは「大変困難」だが…

堆積物にはデブリが含まれているとみられるが、東電は「冷却水が降り注いでおり、温度は約21度で、安定した冷却状態が維持できている」としている。
今回の画像解析について、記者会見した東電の廃炉・汚染水対策責任者、小野明氏は「高い所や低い所がある堆積物の状況が見えてきたのが非常に大きい。
どこから落ちてきたかを調べなければならないが、堆積物の上を狙って調査対象を絞り込める」と成果を語った。

一方、デブリを含んでいるとみられる堆積物が最大70センチを超えることについては「取り出しは大変困難なものと認識している」と小野氏。
それでも取り出しに向けて調査と技術開発に取り組む姿勢を示した。
東電は2号機で堆積物の分布などをさらに調べるため、線量計や温度計を搭載した伸縮アーム型の調査装置を使った調査を検討している。

■東京電力福島第1原発のデブリ取り出し 

福島第1原発では、1〜3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起き、核燃料が圧力容器から格納容器の底へと溶け落ち、デブリとなって固まっている。
国と東電が策定した廃炉の中長期ロードマップでは、平成31年度にデブリを取り出す最初の号機の選定と工法の決定を行い、33年度内の取り出し開始が目標。
取り出しにはデブリの分布などを把握することが必要で、各号機でロボットなどを使った調査が行われている。

産経ニュース 2018.5.1 14:00
http://www.sankei.com/smp/premium/news/180501/prm1805010007-s1.html