◇近大と協定、居心地よい空間作りなど

水族館「海遊館」(大阪市港区)が、近畿大(東大阪市)による学術研究の舞台になる。芸術から医学までと幅広い近大の研究力と、世界の海を再現した展示で注目される海遊館が培った実績を融合させ、同館の魅力をさらに高める成果を生み出す。(松久高広)

 海遊館と近大が先月末、研究を進めるための連携協定を結んだ。

 近大からは、生物理工学部人間環境工学研究室、医学部を含む複数の学部で構成する「医工連携研究コア」の両チームが研究に参加することが決まった。

 海遊館の人気のある生きものが見られるエリアでは、大勢の客がひとかたまりになって混雑することがある。人間環境工学研究室のチームは今年度から、客の行動を観察したりアンケート調査を行ったりした結果を分析し、より居心地よい空間を生み出す研究に取り組む。

 来場者の2割を占めるようになった外国人客と日本人客の好みの違いも分析し、展示方法の改良に生かす。

 海遊館の展示空間に入ると日本の森林が広がり、歩みを進めると太平洋とその周辺の海を再現したエリアを回り、魚やイルカ、アザラシなど様々な生きものの生態を間近に見ることができる。同館によると、こうした展示に癒やしを感じる客は多いという。

 医工連携研究コアのチームは、客がなぜ海遊館の展示に癒やしを感じるのかを調査し、水族館という空間が人の健康や精神、子どもの成長にもたらす効果を検証する計画だという。

 海遊館と近大は、2000年頃にジンベエザメの健康を保つ餌の栄養分析で協力し、09年には、近大が世界で初めて完全養殖に成功した「近大マグロ」の稚魚を同館で最大の太平洋水槽で展示した。こうした関係から、昨春、海遊館側から近大に働きかけて連携協定を結ぶことになった。

 4月26日に海遊館であった協定締結式では、同館の運営会社から三輪年みわねん社長が出席して「近大の総合力を生かした、想像もできないような視点での研究に期待したい」と呼びかけた。近大の細井美彦学長は「海遊館の力を借りて、研究者や学生が様々な課題に取り組めること自体が魅力的だ」と応じた。

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