輸入感染で流行 沖縄・愛知、患者計100人超 77〜90年生まれ注意
毎日新聞2018年5月13日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180513/ddm/016/040/050000c

 沖縄県で流行中のはしか(麻疹)は、愛知県にも感染が広がり、患者報告数がじわじわと増えて両県合わせて100人を超えた。沖縄の流行は台湾からの旅行客が発端で、外国から持ち込まれたウイルスをきっかけに流行する事例は「輸入感染」と呼ばれ、毎年のように発生している。背景には、ウイルスの持つ強い感染力に加え、免疫の弱い大人が少なくないという問題がある。【野田武、熊谷豪】

 沖縄では、3月17日に台湾から訪れた30代男性が、県内を3日間旅行し、同20日にはしかと診断された。この間に男性旅行客と直接接触のあった人が相次いで「2次感染」し、さらに2次感染者と接触した人にもうつる「3次感染」という形で感染が広がった。
 沖縄県によると、これまでにはしかと診断された人は10日現在で94人に上る。年代別では30代が最多で30人。以下多い順に、20代23人▽40代13人▽10代8人−−など。20〜40代が多いのが特徴だ。
 一方、愛知県の患者は20人(12日現在)。3月28日〜4月2日に沖縄旅行をした名古屋市の10代男性が、4月11日に診断された。予防接種は受けていなかった。この男性が受診した名古屋第二赤十字病院では、受診者ら計8人に感染が広がったと推定されている。愛知でも30代(7人)と20代(6人)が多数を占める。
 20〜40代が多いのは、予防接種制度が年代ごとに異なるからだ。はしかはワクチン接種が唯一の予防手段とされ、麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)が一般的だ。乳幼児は公費で接種を受けられる「定期接種」の対象で、現在は1歳の1年間と小学校入学前の1年間の計2回。2回受けるのは、1回目で身についた免疫が、2回目の接種で大きく増強するためだ。
 ただ、定期接種の導入は1978年10月で、接種が2回に増えたのは2006年度。翌年に10〜20代で大流行したため、08年度から1回接種の中学1年生と高校3年生に5年間限定で2回目の接種をしたことで、おおむね28歳以下の年代の人が2回接種を受け高い免疫をつけている。この結果、77〜90年生まれの人(28〜41歳)が1回接種の年代に相当し、免疫が十分身につかずに感染しやすい人もいる。これより上の年代は、子どもの頃にはしかにかかって免疫のできた人が多い。
 ただし、子どもの頃の既往歴は当てにならないことがある。感染症に詳しい東京都立駒込病院(文京区)の今村顕史感染症科部長は「昔の小児科医は発疹や発熱などの見た目ではしかだと診断していたこともある。その中には違う病気も含まれているため、『はしかにかかっているから大丈夫』と誤って思い込んでいる可能性もある」と指摘する。
 ワクチンの接種歴についても、「母子健康手帳の記載が一番確実」として、確認するよう求めている。未接種などの場合、自費になるが、医療機関でワクチン接種を受けることができる。MRワクチンで1回1万円程度。母子手帳が手元にない場合などは、免疫があるかどうかの血液検査も数千円程度で可能だ。

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