日大が英語講師15人を集団解雇する事情
外部の語学学校に「丸投げ」か
http://president.jp/articles/-/24956?display=b

日本大学は今年3月、英語の非常勤講師15人全員を解雇した。解雇されたのは、2016年に新しく設置された危機管理学部とスポーツ科学部の教員で、雇用された際には2020年までの継続雇用も打診されていた。さらに授業は外部の語学学校に「丸投げ」している恐れがあり、解雇の違法性が疑われている。解雇された非常勤講師の1人が、プレジデントオンラインの取材に答えた――。

何の根拠もなく突然の雇い止め
「大学に雇い止めを通告された時はうちのめされました。経済的に苦しくなりますし、地位も失います。しかし、何よりも腹立たしいのは、何の理由もなく辞めさせられたことです。これまでの自分の仕事を否定されたと感じました」

今年3月まで、日本大学・危機管理学部で英語の非常勤講師を務めていた井上悦男さんはそう語る。井上さんは危機管理学部で週4コマの授業を担当していた。1コマの報酬は月額で約3万円。4コマで月12万円の収入減となる。

井上さんは1965年生まれの53歳。東京都生まれで、日本大学文理学部から日本大学大学院に進み、1997年に文学研究科英文学専攻博士後期課程を満期退学。その直後から4年間、日本大学文理学部で助手を務め、2001年から日本大学の非常勤講師となった。以降、非常勤講師の仕事で生計を立ててきた。


昨年度は1週間に日本大学の5学部で19コマ、東京理科大学で2コマの合計21コマを受け持っていた。1コマとは90分間の授業を指す。21コマであれば合計で31時間30分。週5日とすれば、毎日6時間以上教壇に立つことになる。講師の仕事は教壇に立つだけではない。授業には準備が必要になるうえ、試験の作成や採点も仕事だ。

午前9時から午後7時半までずっと授業
井上さんの場合、平日は毎日朝6時半から7時の間に家を出て、朝8時には大学に着き、授業で配布するプリントを印刷する。最もハードだったのは月曜日で、法学部の二部の授業を担当したため、1限から6限まで、つまり午前9時から午後7時半まで、ずっと授業が続いた。授業が終わっても、帰宅後は翌日の授業の準備。ゆっくり食事をする余裕はない。試験の時期には問題の作成や採点のため、睡眠時間を削って対応する必要があった。

年収は約760万円。少ない金額ではないが、専任教員と比べると、その労働環境の厳しさがわかる。日本大学の専任教員の場合、担当コマ数は平均6.5コマで、井上さんと同じ年齢であれば年収は約1200万円。授業の数だけをみれば、井上さんは3倍以上も担当しているのに、報酬は6割程度におさえられている。

(中略)

他大学の授業を断って引き受けたのに

教育費だけではない。井上さんは大学院時代に借りた奨学金をいまでも月3万円ずつ返済している。また助手時代に購入した東京都立川市の自宅のローンもまだ10年残っている。介護関係で働く妻の給与とあわせると、世帯年収は950万円。非常勤講師という不安定な身分でありながら、これだけの収入が確保してきたというのは驚くべきことだ。それだけ井上さんの授業の質には高い評価があったのだろう。

実際に日本大学は、2016年に危機管理学部を新設した際、井上さんに新たに4コマの担当を要請している。井上さんは新学部の立ち上げに関われることを光栄に思い、日本大学の商学部の授業や、東京電機大学で担当していた授業を断って、新学部の授業を引き受けた。

ところが、授業を担当して2年目の2017年11月、井上さんは危機管理学部から「雇い止め」の通告を受けた。雇い止めにあったのは井上さんだけではない。日本大学は三軒茶屋キャンパスに新設した危機管理学部とスポーツ科学部という2つの学部について、英語の非常勤講師15人全員を2018年3月31日で解雇すると通告したのだ。

大学は解雇の理由について「教育課程の再構築」と説明したが、それ以上の詳しい説明はなかった。

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