懲戒請求が不法行為を構成することを認めた最高裁判例

最高裁平成19年4月24日第三小法廷判決(民集61巻3号1102頁)

「懲戒請求を受けた弁護士は、根拠のない請求により名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、
その弁明を余儀なくされる負担を負うことになる。そして、同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、
広く免責を与えたりする趣旨の規定でないことは明らかであるから、同項に基づく請求をする者は、懲戒請求
を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように、対象者に懲戒事由があることを事実上及び
法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。そうすると、同項
に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は
通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求
が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為
を構成すると解するのが相当である。」