2018年5月17日 夕刊

 事件や事故の被害者や遺族の状況を把握しようと、警察庁が調査を行ったところ、児童虐待や性被害など四類型において、90%以上が加害者側による賠償や公的給付金など、金銭的な補償を受けていないことが分かった。同庁が十七日に結果を公表した。支援制度を認知していないとした人も多く、被害者に援助の手が届きにくい実態が浮き彫りとなった。

 警察庁は一月十九〜二十八日、二十歳以上の男女を対象にインターネットでアンケートを実施し、自身を被害者や遺族と申告した計九百十七人について回答を分析した。警察に被害を届け出ていないと答えた回答も相当数あった。

 調査は「犯罪被害類型別調査」と呼ばれる。従来の「殺人、傷害などの暴力被害」「性的な被害」「交通事故」の三類型に、今回は「配偶者からの暴力(DV)」「ストーカー行為」「児童虐待」の三類型を加え、計六類型となった。被害者らの置かれた状況を把握して施策立案に反映させるのが目的。

 結果によると、賠償や給付などを「いずれも受けていない」とした回答は、児童虐待が94・2%で最も高かった。これに性被害の92・9%が続き、DVが91・1%、ストーカー行為も90・2%だった。

 調査では、これらの被害について警察には通報していないとした回答も多く、警察庁の担当者は「潜在化しやすく、泣き寝入りしている人が多いのではないか」と分析している。

 交通事故は35・4%と低く、民間保険の活用などが背景にあるとみられる。殺人、傷害など暴力被害は78・7%だった。

 警察によるカウンセリングや民間支援団体の電話相談など、官民で広がる支援制度についても、児童虐待は87・1%が受けていなかった。ほかの五類型でも利用していないという回答が60〜80%台で、制度が十分に生かされていない状況がうかがえた。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018051702000266.html
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