https://www.cnn.co.jp/m/usa/35119354.html

2018.05.17 Thu posted at 19:46 JST
(CNN) トランプ米大統領が韓国・平昌で今年2月に実施された冬季五輪の数週間前、政権の国家安全保障担当高官に韓国に住む在韓米軍兵士らの家族の退去準備を指示していたことが17日までにわかった。

現役と前職の政権当局者4人が明らかにした。退去は結局実行されなかったが、踏み切った場合、挑発的な措置とみなされて北朝鮮との緊張が激化、地域を戦争に追いやりかねない事態になった可能性もある。

避難準備の指示は、トランプ氏が今年初期の段階で北朝鮮との交戦を現実的にとらえていたことを示唆する。


北朝鮮情勢は現在、同五輪を転機に首脳外交の局面に急きょ転じており、トランプ氏も米朝首脳会談を受諾するなどの対話路線に切り替えた。退去準備の指示をめぐる挑発的な措置から首脳外交への突じょの転進は、トランプ氏が国際外交で見せる起伏の激しい手法の一端を物語るものともなっている。

政権当局者らによると、この指示は1月、大統領に対する日常の国際情勢説明の場で当時のマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)に出された。ただ、政権の国家安全保障担当者らは北朝鮮が戦争準備の動きと解釈することを懸念。また、平昌五輪と南北間で生まれていた外交交渉の機運を台無しにすることへの危惧もあったという。

マクマスター氏はその後、国家安全保障会議の部下に在韓米軍兵士らの家族に国外退去を命じる大統領覚書の作成を指示。この覚書は当日中にケリー大統領首席補佐官室に届けられたという。

2人の政権当局者によると、避難準備の指示が明らかになった後、マティス国防長官とケリー補佐官は妥協案を模索し、韓国に赴任する将来の任務で軍人に家族帯同を禁じる指示に内容を薄める案に同意するようトランプ氏を説得。この線に沿った新たな覚書が作成されたが、結局実行に移されることはなかったという。

前政権当局者や北朝鮮問題の専門家は韓国に住む在韓米軍兵士らの家族約8000人の国外退去の指示は警戒心を招き、トランプ氏の好戦的な言動が地域に既にもたらしていた米国の軍事行動への懸念をさらに高めかねなかったと指摘した。

避難指示に突じょ踏み切ったトランプ氏の心境は不明だが、大統領や顧問らは当時、北朝鮮に対する「先制攻撃」案も検討していたとされる。

前職の政権当局者によると、避難指示はトランプ氏がマティス長官や他の軍首脳に北朝鮮に対する軍事的選択肢を真剣に考慮しているとの意図を知らせる狙いがあったとも受け止められていた。

マティス氏らは軍事行動の選択肢を大統領に与えることを嫌がっていたとし、避難指示の準備命令はトランプ氏が国防長官らの奮起を促すものだったともした。

政権当局者によると、トランプ氏には事態が制御出来ない段階へ陥りかねない中で米軍人の家族を韓国にとどめることは愚かとの判断があったと説明。大統領は北朝鮮への攻撃は準備しておらず、逆に北朝鮮が軍事行動に踏み切る可能性があると判断していたとも明かした。

在韓米軍兵士の家族の退去案はトランプ氏が指示を出す前にも、タカ派とされる複数の米共和党上院議員が公にもしていた。グラハム、コットン両議員らが含まれ、2人はトランプ氏と定期的に意見交換もしている。