http://www.yomiuri.co.jp/eco/20180523-OYT1T50075.html
 山歩きをしている人の衣服の隙間から侵入し、血を吸うヤマビル。

 吸い付かれると、一時的に傷口から出血が止まらない状態となり、個人差はあるが、1か月近くかゆみが治まらなくなるケースも。
秋田県内ではこの四半世紀の間、ヤマビルの生息域が約1・8倍となったことが、県の調査で判明した。
新緑の季節を迎えた県内で、やっかいな生物が勢いづいている。

 ◆東京ドーム4900個分

 県自然保護課が昨年度に実施した調査で、ヤマビルの生息が確認されたのは秋田市、潟上市、五城目町、井川町、上小阿仁村の5市町村だった。
生息域は東京ドーム(東京都文京区、約4・7ヘクタール)約4900個分の面積に相当する約2万3075ヘクタールに上る。
25年前の1992年度には1万3000ヘクタールだったが、2008年度の調査で2万ヘクタールを超え、その後も右肩上がりに拡大している。

 ◆吸血対象が多様化

 ヤマビルが生息域を拡大させている要因として挙げられているのが、ヤマビルに吸い付かれて「運搬役」となる野生動物の行動だ。
一般財団法人・環境文化創造研究所(千葉県習志野市)の「ヤマビル研究会」によると、県内ではこれまで、ヤマビルが吸い付く野生動物は
主にカモシカやノウサギだった。
しかし近年、県内では確認されてこなかったイノシシが出没するようになり、吸血対象が多様化したことで、ヤマビルの勢いも増したと分析する。

 これらの野生動物が、エサを求めて人里近くの山林まで下りてくるケースも多くなっているのに伴い、山中だけでなく、山林と接する住宅付近にも
ヤマビルの生息域が広がっているという。
同研究会の谷重和代表は「『運搬役』の動物の種類の増加が、ヤマビルの生息域の拡大にも影響している」との見方を示す。

 ◆肌の露出避けて

 ヤマビルに吸い付かれないようにするためには、肌の露出を避けることが重要になる。

 同研究会は、〈1〉厚手で長めの靴下をはく〈2〉ズボンの裾を靴下に入れて隙間をなくす〈3〉定期的にヤマビルが付いていないかチェックする
〈4〉市販の忌避剤を靴に吹き付ける――といった予防策が有効とする。

 もし、吸い付かれてしまったら、吸盤を剥がす要領で、爪でそぐようにヤマビルを取り除く。
そして、傷口を洗う際には、ヒルの分泌成分を絞り出すようにしながら水で流すと治りが早まる。
かゆみを抑えるには虫さされ薬などの抗ヒスタミン剤を塗ると効果があるという。

 一方、山林内の環境整備も重要だ。
ヤマビルは、ジメジメとした湿気のある場所を好む。林道と獣道が交わる箇所の草刈りや落ち葉かきを定期的に実施するなどし、
人が行き来する場所でヤマビルを活性化させないようにする対策は欠かせない。
谷代表は「野生動物の管理も含め、ヤマビルの勢力を封じ込めるための環境づくりが大切だ」と話している。