扉をこじ開けたい安倍総理は目下、打開策を模索中。
その秘策として、3メガバンクによるロシア企業への融資が浮上し、銀行幹部は頭を抱えているという。
三菱東京UFJ、みずほ、三井住友の3メガバンク、農林中央金庫、そして北海道銀行の国際部門の幹部たちが、首相官邸に呼び出されたのだ。
官邸の大ホールで待ち受けていたのは、外務省、財務省、そして金融庁などの高級官僚の面々だった。
その場を仕切った長谷川榮一・首相補佐官が、
「ロシアへ提示したプランを進める上で、ファイナンスは避けて通れない不可欠な要素です。
今後、極東開発に参画するロシア企業などに対して、融資をお願いするかもしれません。
その時は宜しくお願いします」
口では"お願いします"と言いながら、それは半ば"命令"のニュアンスが含まれていた。

日本がロシアへ提案した経済協力8項目の1つに、極東の産業振興・輸出基地化がある。
表向きロシア企業への融資は、メガバンクにもビジネスチャンスといえなくもない。
しかし、金融機関が歓迎一色でないのには事情があったのだ。

「2014年にロシアがウクライナへ侵攻して以降、米国とEUが経済制裁を継続しているからです」
こう語るのは経済ジャーナリストの福山清人氏。
特に困ってしまったのは三菱東京UFJ銀行だという。
「三菱東京UFJは4年前、米国の経済制裁対象だったイラクへの送金業務を行っていたことが発覚しました。
その結果、アメリカ政府や州から622億円もの制裁金を科せられたのです。
それがどれくらいの負担だったかといえば、今期中間決算で三菱東京UFJの純利益は4905億円。
制裁金はその12%以上の計算で、高い"授業料"でした」
それゆえ安倍官邸が幾らハッパをかけても、メガバンクは、欧米が経済制裁を続けているロシアへの融資を了承する心理状態ではないわけだ。
別のメガバンク幹部が心中を吐露する。
「首相官邸に呼び出された際、財務官僚からは"案件ごとに経済制裁に抵触するか否かを確認するルートがある"と、説明がありました。
とはいえ、ロシア企業への融資実行後、欧米から"アウト"と宣告されても、官邸や財務省が責任を取ってくれるはずがない」
(週刊新潮 2016年12月08日号)より