地域活性化や交流に期待
 訪日外国人客の増加などを追い風に、大阪市でホテルの開発ラッシュが続いている。市によると、今年3月末現在で営業許可を受けているのは411軒で、1年間で約70軒増えた。特に中央区での開業が目立つ。ビジネス街の「船場エリア」では先月、新たに大阪ビューホテル本町がオープンした。大型商業施設も多い「梅田エリア」では、JR大阪駅北側に今月6日、ホテルヴィスキオ大阪が新設される。ホテル開業に伴い、ビジネス街にも新たなにぎわいが生まれそうだ。【山本夏美代】

 「都市部から観光ホテルを展開したい。眺望の良さやくつろげる空間づくりなど、大阪に必要とされるホテルを目指す」

 利便性の良さで注目が集まる大阪市中央区の本町駅近くで、新たにホテルを開業させた「日本ビューホテル」(東京都台東区)の遠藤由明社長はそう意気込む。同社は浅草ビューホテル(東京)や伊良湖ビューホテル(愛知)など、直営と提携を合わせて全国で19ホテルを展開。「訪日外国人客景気」を商機に、積極姿勢で大阪に初進出した。

 客室(ツインルームを基本に190室)に障子を配して「和」を取り入れた他、特別室(4室)には格子戸や坪庭もこしらえて「ホテル内の旅館」を演出するなど、外国人宿泊客を意識した。

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 観光庁が5月末に発表した速報値によると、2018年3月現在で、大阪府内のホテル・旅館などの客室稼働率は82・8%と、東京都内を1・9ポイント上回って全国1位。ホテルの形態別では「リゾートホテル」が91・8%、「シティホテル」が90・2%でともに1位だった他、「ビジネスホテル」も84・9%で2位だった。ゲストハウスなどを含む「簡易宿所」は59・3%で、こちらも全国1位となった。

 ホテルの需要が高まっている背景には、訪日外国人客の急増がある。大阪観光局によると、17年に大阪を訪れた外国人は約1111万4000人で、前年比118%に増えた。14年は約376万人で、ここ数年で大幅に増加している。17年をみると、中国と韓国、台湾からの旅行者が約7割を占める。

 訪日外国人客らでにぎわうミナミと、ビジネス街の船場エリアなどを含む大阪市中央区。同区内で営業が許可されたホテルは、いずれも3月末現在で16年が4軒なのに対し、17年は13軒、18年は29軒と、廃業したホテルもあるもののここ2年で新たに42軒増えた。まさにホテル新設ブームに沸いている。

 船場エリアで長年続くすし店を営み、地元振興町会の会長も務めている橋本英男さん(76)はホテルが周辺に増えることについて「地域がにぎやかになり、新しい交流が生まれてくれれば」と期待する。

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 JR大阪駅北側ではJR西日本の宿泊施設「大阪弥生会館」(同市北区)跡地に6日、新たに「ホテルヴィスキオ大阪」がオープンする。同社グループの「ホテルグランヴィア大阪」が運営する。

 すぐ近くに「グランフロント大阪」があり、周辺の大型再開発エリア「うめきた2期区域」には23年春の開業を目指して新駅「うめきた(大阪)地下駅」(仮称)の建設が進んでいる。「新しいまちづくりが始まった好機に、長く愛されるホテルにしたい」。ホテルグランヴィア大阪の河合信夫社長は決意をそう語った。

 大阪駅に隣接するホテルグランヴィア大阪の宿泊者は、以前はビジネスマンが中心だったが、今では外国人旅行者らが多いという。新たなホテルはシティホテルと宿泊特化型の間に位置づけ、ホテルグランヴィア大阪とも連携し、「宿泊者の取り込み」を図りたい狙いもある。外国人のさまざまなニーズにも応じようと、「ハラル朝食」なども用意する。

 訪日外国人客の増加に伴い、今後もホテル同士で客の「争奪」が進みそうだ。



毎日新聞 2018年6月5日
https://mainichi.jp/articles/20180605/ddl/k27/020/319000c