神戸市立王子動物園にジャイアントパンダを招くため、5月に訪中した日中友好神戸市会議連(平野昌司会長)が、現在貸与を受けている雌の「旦旦(タンタン)」をもって契約を終了する可能性を中国側に示唆されたことが6日、議会関係者への取材で分かった。2000年に借り受け、2度の契約延長を経ているが、貸与の本来の目的である研究成果の乏しさなどを指摘されたという。市側は契約が切れる1年前の来年6月にも延長交渉する。(霍見真一郎)

 日中平和友好条約締結40年の今年、政府がパンダの新たな貸与を中国側に要請し、受け入れの候補に同園が浮上。2世誕生を夢見ていた神戸に一転、パンダがいなくなる可能性が浮上した。

 「(日本以外の)新しい機関もパンダを要求しているので、雄や赤ちゃんが死んだ王子動物園はやや不利。高齢の旦旦を残り2年で死なせないようしっかり飼育してほしい」。同議連によると、5月16日に中国・北京で面会した中国野生動物保護協会幹部は、神戸との活発な交流に感謝しつつも、厳しい現状認識を語ったという。議連側が要望した新たな雄についても前向きな発言はなかった。

 中国側が特に指摘したのが、貸与中の繁殖と科学研究に対する成果の乏しさ。同園のパンダは、阪神・淡路大震災を契機に、00年に雄雌計2頭を借り受けたのが始まりで、雄の入れ替えを経て2度の人工授精に成功したが、死産などで2世は育っていない。10年に人工授精のための麻酔中に雄が急死して以降は、旦旦だけになった。

 同園によると、旦旦は22歳と非常に高齢で、繁殖の望みは極めて薄い。4月に就任あいさつで同協会幹部と面会した同園の上山裕之園長も同様の説明を受けたといい、「20年で貸与契約を切ることもありうるという印象を受けた」。中国側は旦旦を対象に高齢パンダの飼育研究を提言したといい、2世誕生に向け雄雌2頭の若いパンダを招くことが必須と考える神戸側との温度差が際立った。

 これまで同園のパンダを対象に、繁殖などをテーマにした論文が10本以上出ているといい、中国側へのPRを強め、巻き返しを図る。

 今年は、中国・天津市と神戸市が友好都市となって45周年。議連は、こういった長年にわたるつながりを強調し、政治的な働き掛けを強める方針で、近く市側に訪中の結果報告をし、対策を練るとしている。

ひとりぼっちの旦旦。2011年に新たな雄を迎える話が持ち上がったが、日中関係の悪化を背景に流れた=神戸市立王子動物園
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2018/6/7 06:20
神戸新聞NEXT
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