長野県民が好んで食べるサバの缶詰が品薄となっている。

 昨年来、テレビ番組で体にいいと紹介されて人気が出たほか、漁獲が減ったサンマやマグロの代替として売り上げが急増したためだ。北信地方では旬を迎えたネマガリダケとサバを具にしたみそ汁「たけのこ汁」を食べる機会が増える時期だけに、食卓にも影響が及びそうだ。

 「みそ汁に入れるような安価なサバ缶からどんどん売れていって、仕入れが追いつかない」。県内で33店舗を展開するスーパー「ツルヤ」の食品担当者はため息をついた。同社では、昨年秋にとれたサバで自社ブランドの水煮缶1年分を製造した。だが、需要のピークを前に全店で在庫がほぼ底をつき、他社の缶詰をかき集めているという。

 普段なら数列にわたってびっしり並ぶサバ缶の陳列棚が一部空くことも。たけのこ汁を食べる地域の店舗では危機感を募らせており、ツルヤ須坂西店の小林和隆店長は「『ネマガリダケあってサバ缶なし』という状況は、この地域の住民としても絶対に避けたい」と話した。

 サバ缶は近年、消費が伸びている。日本缶詰びん詰レトルト食品協会(東京)によると、2007年の生産量は約2万7000トンで、ライバルのツナ缶(約4万7000トン)に大きく離されていたが、16年は約3万7000トンとツナ缶(約3万5000トン)を逆転。同じ青魚のサンマが不漁だったり、昨年末から立て続けにテレビ番組で取り上げられたりして、人気に拍車がかかった。

 サバ缶は8〜2月頃にとれたサバを冷凍保存するなどして、計画に沿って生産する。各社は多めの需要を予測していたが、今年は売れ行きが予想以上という。

 国内で最も多くのサバ缶を製造しているマルハニチロ(東京)では、昨年10月〜今年3月の製造量が前年同期比で約140%。年間約1000万個を製造する伊藤食品(静岡市)も、例年に比べて1・5〜2倍のペースで稼働するが、追いついていないのが現状だ。

 増産体制を続ける中、ある缶詰会社の担当者は「サバがとれ始める8月頃までに原料のサバがなくなって製造できなくなることもあり得る」と懸念する。

 今年も既に数回たけのこ汁を作ったという長野市の60代女性は「サバ缶がないとネマガリダケの味は引き立たないが、他の魚の缶詰でもできるか試してみようと思う」と話した。

http://yomiuri.co.jp/economy/20180609-OYT1T50011.html