◆震度5強の島根県西部地震、未知の断層が原因か

解説図:灰色と黒色の丸は、1950年以降のマグニチュード(M)5以上の地震の震央。
赤丸は2000〜10年のM1.5以上5未満の地震の震央(渋谷拓郎教授作成の図を基に制作)
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島根県大田市で震度5強を観測した県西部地震は9日、発生から2か月となった。
地震の震源とされる三瓶山周辺でマグニチュード(M)6・1を記録したのは約40年ぶりで、同市出身で京都大防災研究所の渋谷拓郎教授(地震学)は長期的にみると、同山周辺から広島県北部までの一帯を「いつ大きな地震が起きてもおかしくない」と警戒を呼び掛けている。

渋谷教授によると、島根、鳥取両県はユーラシアプレートの中のアムールプレートに乗っており、1年に1センチほどの速度で東側に動いている。
周辺では、太平洋プレートが東側から西方向、フィリピンプレートが南東側から北西方向に沈みこんでおり、山陰の地下は押し合う力で常に圧縮され、多くのひずみがたまっているという。

地震は、たまったひずみに押された断層が食い違って起こるといい、渋谷教授は「山陰地方の地下には、まだ存在を知られていない断層があると考えられる。
今回はそういう断層が地震を引き起こした可能性がある」と話す。

地震を受け、渋谷教授は島根県と鳥取県西部で発生した2000〜10年のM1・5以上の地震の震央分布図を作成。
1950年以降に起こったM5以上の地震の震央も灰色と黒色の丸で記した。

分布図では、今年4月に起こった県西部地震の震源に近い三瓶山東側から南東の広島県北部にかけて、M5〜6・1の地震の震央が集中していることがわかる。
渋谷教授は、「あまり意識はされていないが、三瓶山東側から広島県北部にかけては地震活動の多い地域で、今回の地震はその活動域の北西端で発生した」という。

図にみられるように、同地域は、50年代と70年代に、地震が活発だった時期があるといい、「今回の地震は78年6月に並ぶ大きさ。30年12月にも広島県北部でM6・1が起きており、大きな地震も発生しうる地域だ」と指摘する。
山陰で震央が集中しているのは、中海から南東にかけての地域。
図では、2000年10月の鳥取県西部地震の直後に起こった余震の震央が広がっている。

ただ、鳥取県の中部地震、西部地震が起こった地域や、宍道断層がある地域は、今回の島根県西部の地震から遠く、渋谷教授は「今回の地震の影響を受けて連動することはない」という。
一方で、鳥取県中部地震は15年にM4の地震が起こり、活発化していると注目し始めたら、翌年にM6・6が発生したという。「山陰では、地震が連発する傾向にある。
今回の震源周辺で、今後も大きな地震はないとは言い切れない。注意が必要だ」と話している。

読売新聞 2018年06月10日 19時49分
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