6/18(月) 12:05配信
Web東奥

 青森県内でタクシー運転手不足と高齢化が深刻化している。若手が入ってこないため平均年齢は年々上昇し約63歳(今年3月現在)に。タクシー保有台数のうち実際に動いている車の割合(稼働率)は約72%にとどまる。県民の節約志向や人口減少によって、タクシーの需要は減り続けており、運転手不足も重なり、各社厳しい運営を強いられている。関係者は、より働きやすい環境づくりやタクシー需要の掘り起こしの必要性を訴える。

 県タクシー協会によると、県内の運転手の平均年齢は全国平均に比べ3〜4歳高い傾向にあり、統計を取り始めた2015年度が61.7歳、16年度が62.3歳、17年度が62.9歳と上昇している。運転手約3800人のうち60歳以上が7割を占め、65歳前後が最も多い。

 業界に長く携わる関係者は「30年前は60歳で退職するのが当たり前だったが、今は普通に働いている」、別の関係者は「5年後、多くのドライバーが高齢のため辞めるのでは」と危機感を表す。

 17年度末現在、同協会登録のタクシー2420台(うち96台は個人)の稼働率は72.1%で、最近10年で最も高かった09年度の82.1%より10ポイントも下がっている。

 同協会が今年3月、県内95社を対象に行ったアンケートで、「乗務員不足」と答えたのが50社(53%)、「やや不足」が32社(34%)と9割近くが不足感を訴えた。

 県内のあるタクシー会社代表は取材に「(人がいないため)30台のうち20台しか動いていない」と嘆き、他の関係者は「タクシーのニーズが縮小している中で、例え稼働率が100%になっても、車に乗ってくれるお客さんがいるかどうか」と声を曇らせた。

 同協会などによると、節約志向や人口減少によって、タクシー需要は減り続けており、運転手の不足も重なって、県内で年間3〜4法人が廃業している。

 同協会の平尾洋専務理事は「運転手の確保・育成のため、長時間労働の改善、選択しやすい勤務体制など、誰もが働きやすい環境づくりに取り組むことが大切」と強調。経営基盤強化へ向けて「妊婦応援・育児支援タクシー、定額タクシーなどのほか、スマートフォンを活用した外国人旅行客への対応など独自のサービスを提供し、需要を掘り起こしていくことが求められている」と話した。

 運転手不足と経営の厳しさという二つの難題に直面している青森県タクシー業界。一部の会社は、入社祝い金や2種免許の取得補助などの制度を設け、未経験者や女性の採用に力を入れる。業界生き残りへ危機感を持ちながら、必死の取り組みを進める。

 青森タクシー(青森市)は昨年春から、2種免許を持っている人が入社する場合、祝い金20万円を支給。新入社員が仕事に慣れるまでの半年間、一定の給料を保障しているほか、主婦らが日中の限られた時間帯に働ける制度も設けている。今年3月に入社した女性(50)は「介護など家の仕事を終えた後、4〜5時間の短時間働ける。給料などの保障が充実している点が入社の決め手となった」と話した。

 三八五交通(八戸市)も未経験者の採用に力を入れる。2種免許取得費のほか、取得中の生活費15万円を支給。入社した場合は祝い金20万円を出し、全員、正職員としている。

 女性ドライバーの確保に力を入れる弘前市の北星交通は昨年、保育所を整備し、柔軟な勤務態勢を整えるなどし、子育てと仕事を両立できる環境を整えた。

 青森市内最大手の成長タクシーは週1回、市内で入社説明会を開催し、入社祝い金や免許取得補助などの制度を説明。特に研修体制の充実ぶりをアピールしている。

 同社では指導担当部署を設置し、1カ月以上かけ、接客方法、法令などを教え、未経験者の不安を解消している。

 青森市の大川歩夢さん(28)は出産を経て6月、同社のドライバーに。13日、指導課の天野洋輔さんの指導を受けた大川さんは「接客の大切さが分かった」と新しい仕事に意欲を示した。

 「タクシー業は人材が一番」と強調する営業課の西山勝衛さん。「研修を通して、一定の収入を得られるように指導している。『タクシーは稼げない』というイメージを払拭したい」と語った。

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