地震で水道管が破裂した現場(18日午前、大阪府高槻市)=共同
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 震度6弱を観測した地震が18日午前、大都市、大阪を襲った。大規模な火災や道路の損壊などがない一方で、水道管損傷に伴う断水やガスの供給停止などライフラインや交通網は大混乱。都市機能のもろさを露呈した。今後、南海トラフ地震や首都直下地震が想定される中、今回の地震を踏まえ、老朽化した水道管というインフラの更新など震災対策の見直しが急務だ。

 断水は大阪府吹田市と高槻市など幅広い地域で発生しており、地震に伴う水道管損傷が原因とみられる。高槻市では古い水道管の修繕のため断水し、今後、14万人近くに影響が出る見通し。

 過去の地震でも断水被害が頻発している。1995年の阪神大震災では最大3カ月の断水が発生。130万戸に影響が出た。2016年の熊本地震でもほぼ同期間の断水となった。水道被害との因果関係は不明だが、水道管の耐震化率の低さと老朽化という課題が浮かび上がった。

 厚生労働省によると、水道管のうち、耐震性のある割合(耐震適合率)は被災した大阪府で39.7%。首都圏の耐震化の状況(東京都63%、神奈川県67.2%)に比べ、見劣りする水準だった。国は22年度末までに全国の耐震適合率を50%以上に引き上げる目標を設定。なお2割台にとどまっている自治体も多い。

 高度経済成長期に整備された水道管の老朽化も進む。厚労省によると、全国の水道管の平均でおよそ15%が、法定耐用年数の40年を超えて使われている。更新率は1%に満たない。首都直下地震が懸念される東京都では16年度末で、耐用年数を超えた水道管の割合は13.5%だった。

 水道は生活基盤を支える基礎となるだけに、水道インフラの破断は社会的に大きな影響を及ぼす。だが、都市インフラを維持するには大きなコストがかかる。小池百合子都知事は18日、記者団に「水道管、ガス管、電気などのライフラインにどう影響があるのかなど、今後の課題の対策にも参考にしていきたい」と話した。

 ガスの供給停止の影響も広範囲に及んだ。地震後、大阪ガスは高槻市や茨木市、吹田市など約11万戸で都市ガスの供給を停止した。日本ガス協会は18日、東京ガス、東邦ガスなど全国の12事業者から復旧のための応援要員を約800人派遣すると発表。2500人態勢で復旧作業にあたるという。安全を確認して復旧するまでには10日前後かかる見通しだ。

 もっとも、6000棟以上が全半焼した阪神大震災に比べ、今回は大規模な火災の発生は確認されなかった。大震災以降、大阪ガスはガス漏れなどの被害が広い範囲に広がらない対策を進めてきた。エリアごとに被害の状況を確認し、遠隔でもガスの供給を止められる仕組みを構築。今年5月には、エリアごとの最新のガスの復旧状況を確認できる「復旧見える化システム」を開発した。大震災の教訓を生かしたインフラ整備が功を奏した可能性がある。

 国による南海トラフ巨大地震の被害として、最大で上水道は3440万人が断水し、都市ガスは180万戸で供給が止まると試算。2710万軒が停電するとみられ、インフラ整備など防災体制の構築が改めて求められそうだ。

2018/6/18 21:42
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3192436018062018EA2000/