石破氏の強みは地方での人気とされる。24年総裁選は党員票(地方票)で165票を獲得し、首相の87票を圧倒した。
無役の今も地方から講演や選挙応援の依頼が絶えず、週末は決まって地方行脚に精を出す。....

 そんな石破氏にとって、総裁選の新制度は「追い風」(石破派中堅)となりうる。総裁選規定が改正されて党員票と国会議員票が同数になり、
以前よりも党員票の比率が高まったからだ。
石破氏の関係者は「いかに石破氏が地方人気をグリップしているかを事前に示せば、国会議員の投票行動にも影響を与えるはず」とみる。
 ただ、石破氏の地方人気は本当に健在なのか。世論調査での自民党支持層の態度は参考になる。

5月19、20両日に産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の世論調査で自民党支持層に次期総裁にふさわしい人をたずねたところ、
首相は44・8%で、石破氏(20・3%)は2倍以上の差をつけられた。
首相が国政選で5連勝する中、石破氏の党員人気も相対的に低下しているようだ。

 「安倍総裁」の下で幹事長に就いた石破氏はその後、安倍内閣で地方創生担当相なども務めた。
27年9月に閣外に出て石破派(水月会、20人)を結成後は、森友・加計学園問題などをめぐり安倍政権を公然と批判することが多い。
しかし、必ずしも政権に懐疑的な党員支持を取り込めているとは言い難い。

■ネット人気の復権は?

 石破氏の魅力は膨大な読書に裏打ちされた「弁舌力」だろう。安全保障、農政、憲法など範囲は幅広く深い。
そんな石破氏はインターネットの普及もあって人気を博してきた。
動画サイト「ユーチューブ」で石破氏の名前を検索すると、再生回数が260万回を超える動画もある。
橋下徹前大阪市長(48)の300万回以上には及ばないが、首相の80万回以上、野田氏の20万回以上、
「ポスト安倍」とされる岸田文雄政調会長(60)の7万回以上をしのぐ。

 ただ、石破氏のランキング上位の動画は、自民党が下野し、石破氏が政調会長として旧民主党政権に論戦を挑んでいた頃のものがほとんどだ。
首相が政権に復帰すると潮目は変わり、安倍政権に苦言を呈すれば、ネット上で「後ろから鉄砲を撃つのか」との批判が並ぶようになった。

 石破氏は28年11月に無料通話アプリ「LINE」に自身のスタンプ「イシバくん」を導入するなど、
ネットで先駆的な取り組みを行っている。
ただ、今年5月に始めた石破氏の写真共有アプリ「インスタグラム」のフォロワー数は2000以下で、首相の16万には遠く及ばない。

 石破氏が首相の座を射止められるかは、安倍政権の世論人気の動向にも左右されるだろう。
民主党を政権から引きずり落とした功労者と言える石破氏を首相に担ぐならば、
石破氏側近たちが積極的に多数派工作をしかけてはどうかと思うが…。...