絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの資源回復につなげようと、岡山県のベンチャー企業と中央大学が、ウナギの稚魚を川に放流してどれだけ定着するかを検証する国内初の実験を始めました。

ニホンウナギは、国内の河川などで成長したあと海に出て卵を産み、そこでふ化した稚魚のシラスウナギが、再び戻ってきて成長しますが、近年はこのシラスウナギの漁獲量が減少傾向にあります。

こうした中、岡山県のベンチャー企業「エーゼロ」と中央大学の海部健三准教授のグループは、川で成長するウナギの数を増やそうと、岡山県西粟倉村で、稚魚を放流して効果を検証する国内初の実験を始めました。

20日から特殊な試薬で頭の組織に印を付けた体長およそ10センチ、重さが平均2グラムほどのニホンウナギの稚魚500匹の放流が始まり、これから数年間川にどれだけ定着したかや、成長の度合いを調べます。

放流にあたっては、稚魚だけでなく、ある程度の期間養殖して育てたウナギも同時に放し、稚魚のほうが定着しやすいかどうかも確認します。

中央大学の海部健三准教授は「ウナギの資源回復は、適切な資源管理や生息環境の改善によって、放流には頼らないことが大切だが、緊急避難的に放流を行う場合、どうすれば資源回復につながるか検証したい」と話しています。

岡山での研究成果が重要な役割
ニホンウナギの保護に向けては、資源量や生態に関する詳細な情報が必要ですが、岡山県内で生み出された研究成果が、国際的に重要な役割を果たしています。

日本や中国など東アジアに生息する「ニホンウナギ」は、近い将来、絶滅する危険性が高いとして、4年前、世界の野生生物の専門家などで作るIUCN=国際自然保護連合によって絶滅危惧種に指定されました。

指定の根拠としてIUCNがまとめた文書には、岡山県内での天然のウナギの漁獲量が著しく減少傾向にあることや、旭川から児島湾にかけて行われた研究で、成長期のウナギが生息場所に応じて、甲殻類や昆虫、小魚を餌としていることなど、岡山県内で中央大学の海部健三准教授らが行った研究成果が引用されています。

今回、稚魚の放流実験を行うベンチャー企業の「エーゼロ」はおととしから、岡山県西粟倉村の廃校になった小学校でウナギの養殖に挑んでいて、どうすれば持続可能な形で養殖業を営めるか、検証していきたいとしています。

エーゼロの岡野豊さんは、「川にどれだけウナギがいて、どれくらいなら採ってもよいのか、科学的に明らかにして、岡山からウナギと人との関わりの新たなモデルを構築したい」と話していました。



NHK 018年6月20日 15時58分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180620/k10011487681000.html?utm_int=news-culture_contents_list-items_001