http://www.bbc.com/japanese/44543478

米、国連人権理事会を離脱 「政治的偏向のはきだめ」と
2018年06月20日

ニッキー・ヘイリー米国連大使は19日、米国が国連人権理事会を離脱したと発表した。同理事会は「政治的偏見のはきだめ」だと批判している。

ヘイリー大使は、「偽善と自己満足」に満ちた組織が「人権を物笑いの種にしている」と述べた。
同大使は昨年にも、「慢性的な反イスラエル的な偏見」があるとして人権理事会を非難し、加盟を見直すとしていた。
ヘイリー国連大使は、マイク・ポンペオ米国務長官と共同記者会見を行った。ポンペオ長官も過去に、人権理事会を「人権の非力な守り手」と評していた。

しかし人権活動家らは、米国の離脱によって世界での人権侵害を監視し対策を取る努力が損なわれると指摘している。
国連のアントニオ・グテレス事務総長は報道官を通じ、米国には理事会に「残って欲しかった」との声明を発表した。
また、ザイド・フセイン人権高等弁務官は米国の離脱について「驚くべきニュースではないが、残念だ。今日の世界の人権の状況を考えれば、米国は後退ではなく前進すべきだ」と話した。

一方、イスラエルは米国の決定を歓迎している。

今回の離脱劇は、トランプ政権が進める米・メキシコ国境を越えた不法移民の親子を引き離す政策が大きな批判を浴びるなかで行われた。

国連人権理事会とは?

国連は2006年に人権理事会を設立したが、人権侵害の疑いのある国にも加盟を許していることで批判を浴びていた。
47カ国が理事国として選出され、3年の任期を務める。理事会は年3回開かれ、普遍的・定期的レビュー(UPR)と呼ばれるプロセスで全国連加盟国の人権に対する取り組みを評価する。
また、人権侵害があったとする報告に対し、独立した専門家を派遣したり委員会を設置することもできる。これまでにシリアや北朝鮮、ブルンジ、ミャンマー、南スーダンに対してこうした措置が取られた。

なぜ米国は離脱したのか

米国は長年、人権理事会を批判してきた末に離脱を決定した。
米国は2006年の理事会創設当時も加入を拒否していた。理事会の前身である人権委員会と同様、人権侵害の疑いのある国にも加盟を許していたためだ。
加入したのはオバマ政権時代の2009年で、2012年に理事国に再選された。

しかし2013年には、中国やロシア、サウジアラビア、アルジェリア、ベトナムといった国々が選ばれ、理事会は人権団体から非難を浴びた。
さらに、理事会から不当な批判を受けたとしてイスラエルがレビューをボイコットしている。
ヘイリー米国連大使は昨年、反政府デモで何十人もの死者が出ているベネズエラに何の措置も取られていない状況でイスラエルに対する非難決議が採択されたことは「受け入れがたい」と述べていた。

イスラエルは理事会で唯一、常設課題とされている国で、パレスチナへの対応が定期的に調査される。
ヘイリー氏は人権理事会への痛烈な批判をした後、「この離脱で我々の人権への貢献が後退することはないことを明言しておく」と話した。
(リンク先に続きあり)

(英語記事 US quits 'biased' UN human rights council)

国連人権理事会からの離脱を発表するヘイリー米国連大使(左)とポンペオ国務長官
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/2A8B/production/_102119801_mediaitem102119798.jpg