https://mainichi.jp/articles/20180621/k00/00m/040/186000c

殺害容疑の姉
弟の遺書、偽装の痕跡 父後継ぎで対立か
毎日新聞 2018年6月21日 06時30分(最終更新 6月21日 06時30分)

 堺市で今年3月、水道工事会社社長、足立朱美容疑者(44)が練炭自殺を装って弟を殺害したとされる事件で、現場から見つかった遺書には、足立容疑者がパソコンで作成した痕跡が残っていることが、捜査関係者への取材で分かった。弟が金策に失敗したことを苦に自殺したように装った文面だったという。2人は過去に会社経営を巡ってトラブルになっていたとされ、府警は関連を調べている。

 足立容疑者は3月27日午後、堺市中区の実家兼会社事務所で、弟の建築会社社長、足立聖光(まさみつ)さん(40)に睡眠薬を飲ませて昏睡(こんすい)させ、トイレで練炭を燃やして一酸化炭素中毒で殺害したとして逮捕された。否認しているという。

 府警によると、事件当時、母親(67)も2階の居間で倒れており、「朱美が作った抹茶オレを飲んだ直後に意識もうろうとなり、気付いたら聖光が死んでいた」と府警に説明しているという。
 捜査関係者によると、足立容疑者が聖光さんの妻を呼んで手渡した遺書には「父と姉のために金策に走り回ったが、お金を借りられなかった」などと記されていたが、虚偽とみられる。
 水道工事会社は足立容疑者の父親(67)が創業。後を継ぐ予定の聖光さんが2012年に建築会社を設立し、足立容疑者が15年ごろに父の後を継いだが、2人は会社の継承を巡ってトラブルになっていたとされる。

 足立容疑者は経営の苦悩をブログに記載。14年9月には、後を継がなかった聖光さんを「弟は挫折を知らず甘い」などと批判していた。15年12月には「会社をつぶさないことが今の私の課題」とも。だが、売上高は2年間で半減し、16年12月期は約1000万円の赤字だった。

 一方、糖尿病を患う父親は今年1月に2回、過度の低血糖状態で救急搬送され、今も意識不明で脳死状態。2回とも足立容疑者が前日に実家に泊まり、自ら作った甘酒を飲ませていたという。父親のインスリンがなくなっており、府警は経緯を調べている。【村田拓也、伊藤遥、土田暁彦】