キルドーザー事件は、2004年6月4日にアメリカ合衆国のコロラド州グランビーにて発生した単独犯による改造ブルドーザーを用いた大規模な建築物破壊事件である。
他に車両等にも被害はあったが、いずれも人的被害を伴わなかった。搭乗者は操縦席で自殺した。

キルドーザー(Killdozer)という名は、シオドア・スタージョンの小説「キルドーザー」(Killdozer!、1944年)が由来である。

事の発端は、2000年にこの町で自動車修理業を経営していたマービン・ヒーメイヤー(Marvin Heemeyer、1951年10月28日 - 2004年6月4日)が、
市役所に対して“隣接する土地にコンクリート工場が建設されると、溶接工場の看板が道路から隠れる”と市の計画に反対したことから始まった。

2年後の2003年に地元の新聞社・スカイハイニュース社がマービンを始めとする市民達を非難する記事を自社の新聞に掲載した為、
反対運動に関わっていた市民達は次第に運動から離脱していき、婚約し既に同居していたマービンの恋人も、彼の元を去ってしまった。

また、市がマービンの店舗を抜き打ちで立ち入り検査し、設備の不備を理由に罰金と業務改善命令を出した。
マービンがこれに従わなかったため、市は彼の店に対し業務停止命令を下し、営業停止の処分とした。

結局市によってコンクリート工場は建設され、更に翌年の2004年3月にはマービンの父が死去し、
マービンは孤立し追い詰められた。こうして、彼の復讐の計画が始められることとなった。

手始めに、マービンはオークションに出品されていたコマツ製D355Aブルドーザーを購入。厚さ1cm以上の鉄板とコンクリートによって外装を補強した。
更にビデオカメラとモニターを6台搭載し、密閉された内部からでも外部の様子が分かるようにした。こうして、2ヶ月後の5月末にキルドーザーが完成された。

事件後に調べられたところによると、キルドーザーは内部からも溶接され、外に出られないようになっていた。

市街地に到着したキルドーザーは、市役所を全壊させ、次にスカイハイニュース社の社屋を破壊し、続いて市長の自宅を粉砕した後、一旦郊外へと出た。
その後、再び市街地に取って返し、工具店に突入した後、その倉庫内でラジエターの故障により身動きがとれなくなり、停止した。

マービンは、SWATの隊員が周囲を取り囲もうと接近したところで、所持していた拳銃を使い、キルドーザー内部で自殺を遂げた。こうして、キルドーザーの破壊活動は同日中に終息を迎えた。

破壊活動を行っていた間、キルドーザーは警察から無数の拳銃や手榴弾による攻撃を加えられたが、いずれの攻撃にも全く無傷だった。

マービンの遺体搬出には、クレーン・酸素・アセチレン切断バーナーを用いたが、乗車口に到達するまでに12時間かかった。

グランビーの市役所やスカイハイニュース社社屋、コンクリート工場、市長宅、工具店、パトカー等7億円相当の被害がもたらされた。

しかし、死傷者はマービンの自殺のみだった。