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 水産側は大型のシロナガスとかマッコウについては完全に捕りすぎであるにもかかわ
らず、科学的に調査して捕りすぎではないということを言っています。当時はいま問題
になっているミンクやニタリは捕ってなかったんですね。これらは小さいから、経済的
に合わないということで、同じ油をつかって南氷洋まで行ったら、2〜30倍なんですね、
重量にして。というのは長さで3倍ということは重量にすると3の3倍ですから三九-二十
七でま、だいたい、2〜30倍なんです。そうすると、同じ手間かけて一発ドンと撃ったら
ば、2〜30倍のものを捕ったほうが得だということは、資本の論理で、そういう小さいの
はほとんど捕ってなかったわけです。ですから、いっぱいいたのは事実ですが資源の状
態もわかってませんでした。
 その当時1973年に、鯨のほうの研究では多分一番利害抜きに水産庁の役人として、も
っともよくやった人として、いまでも彼のその資料をつかっていると思いますが、土井
さんという人が、魚類の資源診断ということで、中央公論の『自然』という雑誌に書い
てて、その中ではっきりと、「今やっている鯨の10年間取り止めは当然だ。ただし処女
資源であるミンクやニタリはまだ捕れるだけのレベルはいるんだ」ということを書いて
います。その当時、もう一人、いま遠洋水産研究所に行っている、その前、鯨類研究所
や東大の海洋研究所にいた粕谷さんなんかも、ストックホルムの環境会議を受けて、
『公害研究』なんかにも書いています。
 当時は、ミンクやニタリのことや、太地や鮎川や和田浦での沿岸の小型捕鯨について
は何も水産庁や業界は言わなかったわけです。ただ、大資本がやっている遠洋の大型の
鯨について守ろうと、それは正しいんだということだけだったんですね。だから私は、
ひとつはそういう問題のすり替えでですね、いままで乱獲だったにもかかわらず、その
ことを反省しないで、次にミンクやニタリを捕るときに、それらについては、資源はい
っぱいあるし、乱獲もしてないという言い方をして、鯨の種類をすり替えて議論をはじ
めたんですね。この点は、おかしい。
 もうひとつは、その当時、水産業界の中に心積もりとしては、いまから15年前にすで
に捕鯨業から撤退を決めてましたから、鯨研の人全部を移して、鯨研というのは元々企
業が自分たちのために作った研究所ですから、企業の論理を優先させた研究所ですか
ら、それをいまさら鯨研がどうのと言ってもしょうがないんですが、もうからなくなっ
たらそういうことに金をかけるのは馬鹿らしいから、生首切るわけにいかないから東大
とか水産庁とかそういうところへみんなやったわけです。で、そういう中で、実は補償
という問題が出てきた。国際的な(ストックホルムの環境会議を含めて)世論で日本の
水産業界は何も悪いことがないにもかかわらず、捕鯨をやめざるをえなくなるのだか
ら、それは業界について補償すべきだという論理です。日経あたりがそれを書いてまし
た。そうなりますと、米沢という水産庁の次長はやめて水産庁を定年になりまして、日
本水産に勤める。天下りですね。のちに副社長になります。そうしますと、彼は国際交
渉をして結局は鯨はだめだという話になって、世論として漁業補償ということになれば
手土産つきの天下りということになりますよね。そういうことをやっている。
 もっともこのくだりはNHKがカットしまして、そのコメントのあとに、小原さんと米沢
さんの対談が続いたわけですが、彼がカンカンになりまして、僕はたたかれっぱなしに
なりました。