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2018年07月06日
「不適正AV」業者が新団体、監督語る「表現の自由」 支援団体は…
高野 真吾

 健全化に向け「適正AV」という枠組みを掲げるアダルトビデオ(AV)業界で、「不適正AV」とされた業者が新たな団体を立ち上げました。突然できた「適正AV」が「基準」になることへの不安や「表現の自由」が脅かされるとの心配が背景にあるためです。内部で「適正・不適正」をめぐる主導権争いをしているように見える動きに対し、AV強要問題の被害者を支援する団体は「冷めた目」でいます。(朝日新聞記者・高野真吾)

ベテラン監督動く

 新団体の名称は「映像制作者ネットワーク」(CCN)。「すべての人が安心できる成人作品を」とのうたい文句で、出演者、制作者、視聴者の安心を目指すとしています。すでにHP (http://ccnetwork.jp/) を公開し、活動趣旨などを公表しています。

 動きの中心となったのは、数々の話題作を世に送り出してきたベテランの安達かおる監督(66)です。一般社団法人としての登録準備を進めており、月内に済ませるつもりです。安達監督の「V&Rプラニング」などのAVメーカー、個人や数人で撮影している「同人AV」など30組織ほどが法人の会員になる予定です。

 7月5日には「適切な映像制作の方法」を専門家に学ぶ勉強会も開きました。AV出演強要問題に取り組むNPO法人「人身取引サポートセンター ライトハウス」のスタッフを講師に呼びました。

第三者委員会が指導

 AV業界は昨年4月、AV出演強要問題の表面化を受け第三者委員会を立ち上げ、大学教授や弁護士などを理事に迎えました。

 委員会はAVメーカーなどでつくる知的財産振興協会(IPPA)やプロダクションの業界団体「日本プロダクション協会」(JPG)や「第二プロダクション協会」(SPA)を指導しています。

 そして「IPPAに加盟しているメーカーが制作し、正規の審査団体の厳格な審査を経て認証され製品化された映像のみ」を「適正AV」としています。

「健全化目指してやってきた自負」

 これに驚いたのが安達監督ら、IPPAに加盟せず、自主審査という形で作品を販売してきた人たちです。

 安達監督は、1986年にV&Rプラニングを設立。社員だったバクシーシ山下監督が撮った作品が日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)に審査拒否されたことから、1993年にビデ倫を脱退しました。

 以降は審査機関に審査をゆだねず、自主審査という形で作品を世に出してきました。安達監督は「業界の先鞭(せんべん)を切って、女優の身元確認の記録化や出演契約書の書面化をしてきた。業界の健全化を目指してやってきた自負がある」と主張します。

公取委への告発も一時は準備

 安達監督は一時、IPPAが独占禁止法違反にあたる行為をしているとして公正取引委員会に告発する準備を進めていました。

 IPPAがプロダクションに対し非加盟メーカーに女優を派遣させないようにしていると各種資料を集めて判断したからです。

 CCNと第三者委員会は6月4日に会合を持ちました。以降、プロダクションからの女優派遣の制限が緩やかになってきたため、いまは告発の動きは見合わせています。

 それでも安達監督は「不適正AV=違法AVとの誤った認識を改めたい」と話します。「適正AV」の提唱が始まった昨年4月以降、大手サイトから「不適正AVメーカー」の作品がおろされる事態などが起きたことを挙げます。
(リンク先に続きあり)