広島県呉市に仕事で行ったことがある。
「まだ日本にこんなところがあったのか…」
思わず口に出てしまった言葉を同行した上司に失礼だと咎められた。

柱が傾いているボロボロの家、ツギハギだらけの服を着る住人、青っ鼻を垂らした子供たち。
そして彼らは余所者で身なりのいい我々を監視する様に見詰めている。
バブル崩壊だの、リーマンショックだので沈んでいた我々は改めて広島の現状を噛み締めていた。

その時、我々を見るなり何を思ったのか、
一人の住人が涙ながらに「申し訳ありません」と我々に何度も土下座して詫び、干し柿をくれた。
我々は、何が起こったのかわからないまま、干し柿を手に持ったまま東京へと帰路についた。