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困難な状況が感情、思考、生理機能などに与える影響はいままで科学によって検証されてきている。ところが、困難な状況には至っていないにも関わらず困難な状況を予期すること自体が人体にどのような影響を与えるかは今まであまり研究されてこなかった。

今回の研究が掲載された学術誌『The Journals of Gerontology: Series B (Psychological Sciences)』によれば、朝目覚めたと同時に「今日はヤバイ…」と感じた被験者は作業記憶の低下が見られた。この低下は実際にヤバイ事態が発生してもしなくても見られ、また年齢層によっても不変だった。

ちなみに前の晩に「明日はヤバイ…」と思って寝たとしても、翌日に作業記憶の低下は見られなかったそうだ。

実験では24〜65歳の被験者240名が2週間にわたってスマートフォンのアプリを介して朝一番、夜寝る前と、日中5回のアンケート調査に協力した。朝と夜のアンケートではどれほどのストレスを予期しているかを記入。日中のアンケートでは実際ストレスを感じた出来事とそのストレスの度合いを記録し、さらに空間作業記憶を試すテストを受けてもらった。

結論として、実際困難な状況が起きなくても、それを予期するだけでストレスを感じて作業記憶の低下を招いてしまうことがわかった。

作業記憶は脳が短期的な情報を貯蔵するメカニズムであり、新しい情報を処理・維持するのに不可欠だ。作業記憶の低下は凡ミスにつながるとZME Scienceが指摘しているとおり、そのミスの度合いによっては仕事上のクライシスにもつながりかねない。

これが本当ならば、はじめからクヨクヨせずとも、とりあえずは前向きな気持ちで一日をスタートしたほうが仕事のパフォーマンスも維持できるし、万が一クライシスが勃発しても冷静に対処できるということだろうか?

研究者たちからの提案としては、日中に気分をアゲてくれるメッセージや、トラブル回避に役立つノウハウなどを配信してくれるスマートフォン用のアプリが有効だとしている。アプリがなくたって、クヨクヨしている同僚を見かけたらぜひとも「悩むだけ損だよ!」と教えてあげたい。

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