「毎日が安売り」日本で通じず 西友


「ここに来れば何でも安く買えるし、価格への安心感がある」。東京都江東区の西友の店舗を訪れた主婦(44)はこう語る。
売り場に並ぶ商品は「国産若どりもも肉」(100グラム、85円)など、低価格をPRするものが中心。EDLP(毎日が安売り)と
呼ばれる、ウォルマートの代名詞ともいえる販売手法だ。

西友は全国に335店(5月時点)を展開し、スーパーとしてはイオンやセブン&アイ・ホールディングス陣営に次ぐ全国区の存在。
低価格を訴求するテレビCMでも知られ、駅前などの好立地で長年愛用される店舗も多い。2000年にはいち早くネットスーパー
事業を開始するなど、業界でも注目を集めてきた。

02年に資本業務提携を結んで以降、ウォルマートはこの西友に米国で培ったノウハウを徹底して注入してきた。
物流などの流通コストを絞り込み、同業他社を圧倒するEDLPを実現することで客数を伸ばし、収益力を高める。
08年の完全子会社化後は、こうした米本社主導の戦略がさらに強まったとされる。

ただ、足元の業績は厳しい。西友の売上高は7000億円前後に上るが、ウォルマート日本法人の最終損益はトントン。
中核である西友が利益貢献していないことが分かる。西友には老朽化した店舗も多い一方、来客増につながる改装などの
設備投資は十分に進んでいないとの指摘もあった。

05年に仏カルフール、13年には英テスコが日本市場から撤退している。背景には、日本の特殊性と急速な競争環境の変化がある。

物販以外にも多様な機能を持つコンビニエンスストアや価格競争力に秀でたドラッグストア、スマートフォンの普及などで
急速に利用が広がるネット通販――。日本の小売業界では多様な業態が互いに浸食し合う複雑な競争が進む。

さらに、メーカーと小売業をつなぐ卸売業など、日本独自の商慣習に外資系が順応するのは簡単でない。ウォルマートも04年に再建中の
ダイエーの買収を検討するなど事業拡大意欲が旺盛だった時期もある。それにもかかわらず西友を売却するのは、こうした日本市場の
開拓に見切りを付けたものだと言えそうだ。