今日、医学部人気は常軌を逸した程度にまで躍進し、
たいがいの地方の国公立医学部の入学偏差値は東大非医学部のそれを上回っているほどである
これはバブル崩壊以降、名門企業の相次ぐ業績不振や倒産を目の当たりにする一方、
新規参入と人材供給が著しく制約されている規制業種の医師界が唯一絶対にして安定的高収入職としての地位を維持していたためだ
明日をも知れない時代に、実質高給公務員としての医師資格を約束してくれる医学部が求心力を高めたのである
このことは優秀な人材を集められなくなった日本の産業競争力の凋落に拍車をかけることにもなっている
医学部人気は日本の産業政策及び大学行政が破綻したことの証左に他ならない
同じように、獣医学部の異様な競争率の高さも規制によって生じているのである
ただちに医学部開設を全面自由化して、医師の供給数を急増させるべきである
既に歯科医院は飽和状態に達して今や不人気業種になっている
弁護士も司法試験の難易度を緩和し、法科大学院方式を導入して供給数および絶対数が増加した結果、
稼げない職業に転落した。稼げないと言ってもあくまで平均的な弁護士像であって、
実力上位者は歴然と高報酬エリートであり、弁護士という職業が玉石混交になったのにすぎない
そのような稼業では、真にその能力が実力社会となる
どの弁護士が有能で頼れるのかが評価され、その評価に基づいて報酬もまた定まる
能力の乏しい者は自ら僻地に赴くなり、企業内弁護士として食い扶持を求めるより他なくなる
それが自由競争というものである
医学界もまたそうあるべきだ
自由に医学部を設立でき、その経営はいかなる公的な助成も得ずに自立的に運営され、
運営費は学生やその保護者、事業パートナー企業からの支援金や寄付金によって賄われる
学生は全額自己負担の高額学費を親の援助もしくは、将来の収入を見込んだ教育ローンによって支払う。
こうして医師は供給過多にして激しい競争にさらされる能力本位の職業へと変化するだろう
財政難と高齢化によりもはや維持困難になってきた国民皆保険制度も根本から見直しに着手し、
混合診療を解禁し、自由診療を拡大することによって、
医療技術に秀でた医師は高額医療報酬を得る一方、やぶ医者は僻地に追いやられ、
親の医院を継いだ馬鹿息子は悪評で経営を傾かせるだろう
そうした結果、修業に超高額学費を要する一方で、
飽和状態の激しい競争により、事業の継続が困難になる医院が出始める世情となって、
医学部はもはや人気学部ではなくなっていくはずだ
それでも医業を志す者、親の医院を継ぐ定めと覚悟する者が目指す医学部だというなら、
その時、そこに裏口入学の弊害を語る余地はもはや無くなっているだろう