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安価で丈夫なプラスチックは多くの製品に用いられ、20世紀半ば以降の暮らしを大きく変えた。

2050年までに海に流入するプラスチックごみの総重量が、世界の海に生息する魚の総重量を超えるとの予測もあり、分解されずたまり続ける大量の廃プラスチックの問題が今、世界で懸念されている。

16日は海の日。「便利さ」追求の陰で広がる「危機」を現場から考える。

ガンジス川からインド洋へ 年間9万〜24万トンとの推計

気温40度超、熱風とともに腐敗臭がプラスチックごみの「川」から吹き上げた。雨期目前のインドの首都ニューデリー。

不法移民の多い貧困地域タイムール・ナガル地区にあるその「川」は元々は水路だが、ビニール袋やストローなどが人の背丈ほども積み上がり、加えて残飯も辺りを覆う。

地元NGOなどによると、ごみの3分の1はこの地区から出たものだが、3分の2はペットボトルなどを換金するため住民が地区外から持ち込んだもの。

カネにならないビニール袋などが際限なくたまっていく。「食べていくのに精いっぱい。環境のことなんて気にしていられない」。ペットボトル探しをする不法移民のブドゥさん(39)は言った。

雨期になればごみは水に押され、ガンジス川を通ってインド洋へと流れ込む。「残念ながらこの水路は海や川の汚染の原因だ」。

衛生担当の住民、チョードリーさん(27)は嘆息した。地元紙によると、インド国内から海に流入するプラスチックは年間9万〜24万トンとの推計がある。

地中海 クジラの体内から29キロ

インドから直線距離で約8000キロ離れたスペイン南東部ムルシア州のパロス岬。

今年2月、地中海の海岸に体長約10メートルのやせ細ったオスのマッコウクジラの死骸が打ち上がった。

同僚らと死因を調べることになった「エル・バリエ野生生物保護センター」のアリシア・ゴメス・デラモーンさん(29)は、クジラの胃と腸から消化されずに残ったプラスチックの破片を見つけたが、当初は驚きはなかった。

プラスチックは世界の海岸に打ち寄せるごみの8割以上を占め、海洋生物の体内に取り込まれたりする例はよくあるからだ。

だがその後、アリシアさんたちは言葉を失うことになった。「ごみを引っ張り出したら次から次へと止まらなくなって……」。

3時間半かけて取り出したごみの大部分がプラスチックで総量は29キロ。地中海を取り囲む中東、北アフリカで使われるアラビア語が書かれたレジ袋なども含まれていた。「打ちのめされた。なぜこんなことが起きるのかと」

海はつながっている。世界のどこかで出たごみが、別のどこかで生き物や地球を苦しめる。クジラはその象徴なのか。

スペイン南東部の岬に打ち上がったマッコウクジラの体内から見つかった29キロものごみは主にプラスチックで、レジ袋やペットボトル、傘などの生活用品、その他は漁業に使うネット、農業用の温室の一部など計47種に及んだ。

洗って乾燥させても19キロの重さがあった。


セルドラン氏は、クジラの死が人間の営みを巡る根源的な問いをもたらしたと考えている。

「(分解されにくいために)200年以上も地球にとどまるプラスチックをわずか15分のためだけに使う。

こうした人間の習慣を終わらせなければいけない。プラスチックに依存した文化を変えることが求められている」


(スペイン南東部のパロス岬に打ち上がったマッコウクジラ。体長から推定される体重の3分の1程度にやせ細っていた=エル・バリエ野生保護センター提供)
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