「手加減して殴っており、小突いたという感じ。激高していたわけではない」。公判で浜野被告らは、激しい暴力は加えていないと主張した。

だが、糸岡さんのあばら骨の骨折は十数カ所に及び、肺に刺さった骨が致命傷になった。糸岡さんが搬送される様子を見ていた
近くの飲食店の男性は「誰か分からないくらい、顔が腫れ上がっていた」という。

法廷で浜野被告は、かつて所属した暴力団で「絶縁処分」を受けたとされることを問われると、その口惜しさなどを熱心に語った。
今回の犯行については、「尊い命を奪うことになり申し訳ない」と述べたものの、相手が謝罪しているのに暴行をエスカレートさせた
詳しい理由などは語らなかった。

「キレたら止められない性格。やっているうちに収まりがつかなくなったのでは」。ある捜査関係者はそう話す。

「これは殺人、主人は殺された」

糸岡さんは地元、草津市で祭りやレンコン栽培を復活させるなど地域活性化のリーダー役としても活動し、知人からは親しみを込めて
「シンベ」と呼ばれていた。中学、高校の元同級生の男性(60)は「親分肌のいい人だった。何の落ち度もないのに、悔しくて悲しい」と憤った。

「ごく平凡な暮らしが180度変わってしまった」「かばってあげられず胸が張り裂けそう」。公判で糸岡さんの妻は悔しさをにじませた。

事件当夜は連絡を受け店に駆けつけた。糸岡さんを乗せた担架が動いたとき、前で組んでいた両手がだらりと落ちたという。
妻は慌てて組み直したが、再び落ちた。「腫れ上がった顔についていた血の滴が、無念さのあまり流した涙に見えた」といい、
「110番したらどんな仕返しをされるか」と通報をためらったことを悔やんだ。

店は事件後、予約がほとんどキャンセルになり、閉店を余儀なくされた。「主人は殺された。これは殺人だと思っています。
一生刑務所に入っていてほしい。傷害致死の中でも一番重い刑にしてほしい」。妻はそう訴えた。

求刑に「納得できない」

検察側は論告で「全く落ち度のない被害者に因縁をつけているに等しい」などと、浜野被告に傷害致死罪の量刑の上限にあたる懲役20年、
関被告には懲役15年を求刑。弁護側は「犯行は、浜野被告の飲酒による自制心の低下も影響している」
「周囲が早く110番するなどの措置をしたら、事態の拡大は防げた」などと情状酌量を求めた。

浜野被告は求刑後の最終意見陳述では「20年…。重すぎる。それにしても納得できない求刑だ」などと語った。

判決は、浜野被告が懲役15年、関被告が同10年。大津地裁は「雑炊の作り方という理由だけでは不釣り合いな暴行」と断じた。
両被告は量刑を不服として控訴した。

「服役後は仏門に入る」。公判で弁護人から「これからどうしたいか」と問われ、こう答えた浜野被告だが、
些細(ささい)な理由から人命を奪ったことへの真摯(しんし)な反省はなされるのだろうか。