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ワイン、チーズ…産地、販売者、消費者は
2018年7月17日 18時44分日EU・EPA

日本とEU=ヨーロッパ連合のEPA=経済連携協定の署名式について、ヨーロッパから輸入したワインやチーズを扱う店の客からは、値下げに期待する声も聞かれました。

ワインとチーズを売る店は

東京・中央区のワイン専門店は、フランスやイタリアなどヨーロッパから直輸入したおよそ120種類のワインを販売しています。

EUとのEPAが発効されれば、一般的な750ミリリットル入りのボトルで1本あたり、およそ90円かかっていた関税がかからなくなることからこの店では、ヨーロッパ産のワインの値下げや品ぞろえの強化を検討しています。

また、チーズについてもフランスやドイツ産のカマンベールチーズやブルーチーズなどおよそ30種類を販売していて、EPAの発効後に値下げを検討したいとしています。

35歳の男性客は「ワインは香りが好きなので価格が安くなれば、飲む機会が増えそうです。いろいろなワインを試してみたい」と話していました。

ワイン専門店の「ヴィノスやまざき」商品部の本島彰子さんは、「ワインといえばフランスやイタリアが主力商品なので、原価が安くなれば、よりワインを消費者に提供しやすくなる。あまりワインを飲まない人にも飲んでもらうきっかけにしたい」と話していました。

日本でワインを作る団体は

国産のぶどうだけで作る日本ワインの生産量が全国で最も多い山梨県のワイン酒造組合の齋藤浩会長は「県内のワイナリーは市場のほとんどが国内なので、フランスやスペインといったワインの伝統国の製品が安く入ってくることは脅威だ。日本ワインは価格が少し高いので、価格競争になることが懸念される」と述べました。

そのうえで、日本ワインについて「消費者に選んでもらうには価格だけでなく、日本ワインや山梨のワインならではの品種や作り手のこだわりなどトータルの価値を伝え続けていくしかない」と話し、関税撤廃を受け海外のワインに対抗するには日本のワインのブランドや価値を高めていく必要があるという考えを示しました。

日本でチーズをつくる人、買う人は

北海道東部の新得町にある「共働学舎新得農場」では、およそ100頭の牛を飼育して、20種類近くのチーズを生産しています。

40年前に牛6頭で農場を立ち上げた代表の宮嶋望さんは、EPAの調印について「これからが大変だなと思います。日本に比べてヨーロッパのチーズ工房は大規模なので、価格面での競争は難しい。原料の牛乳にこだわるなどして、日本人の口に合ったチーズを作る努力をしないと生き残れないです。ただ日本国内のチーズの需要はまだ伸びると思うので、ヨーロッパのチーズと共存していけると思います」と話していました。

農場内にある売店にチーズを買いに来ていた町内の80代の男性は、「お中元やお歳暮でここのチーズを使っています。外国の安いチーズが入ってくれば、食べてみようという人もいると思いますが、おいしいし安全なので私はこれからも、ここのチーズを買うつもりです」と話していました。

日本酒の酒造会社は

長岡市の老舗の酒造会社「吉乃川」はヨーロッパでは日本食とともに日本酒ブームが広がっているとして、EPAが商機になるとみています。

この会社の日本酒の輸出先は台湾やシンガポールなどアジアが中心ですが、数年前からフランスやドイツへの輸出も始め、ことしの輸出量は全体で去年より20%増えているということです。

峰政祐己社長は「これまで輸出は環太平洋が中心でしたがヨーロッパでの日本酒ブームが広がっているので積極的に輸出をしたいと思っています。海外の人が飲むようになるといろんな味を試行錯誤するようになると思うので業界にとってはいいチャンスになると思います」と話していました。

日本茶の生産者は

埼玉県の特産品、狭山茶の生産者は「狭山茶の魅力をしっかりヨーロッパにアピールしたい」と期待を寄せています。

埼玉県狭山市の茶農家、奥富雅浩さん(38)は3年ほど前から狭山茶をモンゴルに輸出していてことし10月には狭山茶をヨーロッパでもPRするためフランスに向かう予定でした。

奥富さんは「フランスへの輸出を考えているので、それを後押ししてくれるニュースだと思っています。アルコールと違ってどんな年代にも飲んでもらえる狭山茶の魅力をしっかりヨーロッパにアピールしたい」と話していました。