元最高裁判事が、最高裁判決を批判。
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7月20日(金)朝日新聞東京版朝刊社会面

「個人」が見えない最高裁判決   弁護士・元最高裁判事 泉徳治さん(79)

今回の最高裁判決には、「個」が見えません。まず国家があり、その中に個人がある
という発想になっています。日本の憲法体制は個人の尊重を一番上に持ってきている
のに、仕組みを裁判官一人ひとりが頭の中で咀嚼していなかったのでしょう。

戦前は国家が一番上にあり、個人はその構成要員という考えでした。戦後の憲法体制
では、その発想が逆転したことが、まだ分からないのでしょうか。

今の世の中で君が代を拒否する人は、少数派かもしれません。しかしそうした人々も
尊重される権利があります。憲法13条では「すべて国民は、個人として尊重される」
と保障しているからです。決してわがままを言っているわけではありません。

個人の人権は公共の福祉で制約される場合もあります。しかし国歌を拒否する人たちが
いるからといって、国家が無くなるというものではない。君が代の強制は、人権を制約
してまでもどうしても必要なものとは言えないのです。少数派の個人の人権を守るのが
司法の一番の使命。そのことを最高裁が分かっていないのは残念です。