https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180724-00010000-nishinp-soci&;p=1

「鍵をなくして家に入れない」という理由で業者を呼んだら、高額料金を請求された−。
そんな被害が相次いでいるとの情報が西日本新聞の特命取材班に寄せられた。
福岡県内の複数の鍵店によると、料金は高くても数万円のはずが、「数千円」の低料金をうたって
10万円以上請求する業者もいるという。調べてみると、厳しい業界事情が浮かんできた。

「日本一の技術、どんな鍵でも解錠」「早い、安い、安心」

今年3月、自宅の鍵を紛失した福岡県内の女性は、インターネットで見つけた業者に依頼した。
工具箱を片手にやって来た作業員は鍵を見るなり、「これは難しいですね」。
鍵を開けてくれるはずがシリンダー錠を破壊し、鍵交換料や出張料など計10万円を請求されたという。

■高額のキャンセル料を請求されるケースも

国民生活センターによると、同様の相談は2008年に49件だったが、昨年は235件で約5倍に。
業者のサイトには「数千円から」と表示されているものの、はっきりと料金を明示しないのが特徴で、
理由をつけて加算される。断ると高額のキャンセル料を請求されるケースもある。

福岡県内に店舗を構える複数の鍵店に聞いたところ、解錠料金は鍵の種類や鍵穴の数などで異なる。
明確な料金をあらかじめ提示するのは難しいというが、「開けるだけなら、おおむね1万〜2万円程度。
鍵の形状を教えてもらえれば大体の料金は提示できるはず」と口をそろえた。

■「かつて客からぼったくっていた」業者の男性に話を聞くと…

取材を進めると、「かつて客からぼったくっていた」と打ち明ける業者の男性に出会った。

証言によると、高額請求を行う業者の多くが全国で展開する大手業者の下請けになっている。
サイトを見た客が電話で依頼すると、「本部」から地元の下請け業者に連絡が行く仕組み。客を紹介してもらう
代わりに売り上げの4割を吸い上げられるといい、「適正価格で商売していたら食べていけない」と漏らした。

大手にぶらさがらなければ生計を立てることが難しい事情もあるようだ。

■大手の下請けにならざるを得ない者も

1990年代後半、特殊な金具を鍵穴から入れて解錠する「ピッキング」による窃盗被害が多発。
防犯機能のある鍵への取り換えなどで仕事が急増し、解錠技術が十分に身に付かないまま参入する者が相次いだ。

その後、鍵交換をドアなどの製造会社自体が行うようになり、テレビCMなどを行う大手の参入も相まって
地方の鍵店の仕事が激減、廃業が相次いだ。技術不足で独立もできず、大手の下請けにならざるを得ない者もいるという。

■「焦らずに複数の業者に相見積もりを」

高額請求を行っているとされる大手業者に、記者が電話してみた。

取材で得た知識を元に自宅の鍵の形状や種類を細かく説明し見積もりを求めたが、オペレーターの女性は
「作業員が現場で見ないと料金は提示できない」。出張料やキャンセル料はかからないと言うが、
ホームページには「発生いたします」とあった。

消費者問題に詳しい桑原義浩弁護士(福岡県)によると、こうした業者の手法は消費者契約法の「不実の告知」に当たる
可能性があり、契約を取り消せることも。高額なキャンセル料を請求されても、適正価格に減額できる場合があるという。

鍵の紛失は誰にでも起こりうる。どうすればトラブルを未然に防げるか。業界団体、日本ロックセキュリティ協同組合は
「焦らずに複数の業者に相見積もりを行い、料金に納得した上で依頼することが身を守るカギだ」と話した。