月の南極と北極に氷の結晶が存在することを、米航空宇宙局(NASA)の研究チームが発見した。インドの人工衛星や京都大学などによる月の隕石の研究で、氷が存在する可能性は指摘されていたが、決定的な証拠が見つかったのは今回が初めて。

 今月20日に『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された研究論文によると、カリフォルニア大学シリコンバレー校やハワイ大学の研究チームは、NASAが開発した鉱物探査観測装置(M3)のデータを解析した結果、南極と北極に氷の結晶が点在しているのを発見。

 M3は、2008年10月にインドが打ち上げた月周回衛星チャンドラヤーン1号に搭載されていた観測装置のうちのひとつで、月全体に分布する鉱物地図を作るためにNASAが開発。氷が反射する光を観測するだけでなく、赤外線を使って水の分子が蒸気なのか、液体なのか、氷の状態なのかを判別できる能力を持つ。

 チャンドラヤーン1号によって、2009年には水分子の存在確認という最大の発見を遂げたものの、到着からわずか10カ月後にシステム故障によってミッションが終了。

 研究チームは今回、M3が残した観測データを詳細に分析し、太陽の光が届かない南北の極にあるクレーターの影に存在する氷の存在を暴いた。発見された氷の大部分は、気温がマイナス156℃以上になることはない極低温の場所に集中しており、表面に水がたまっていれば、将来有人探査を行うときの有効な水資源として使用できる可能性があると期待されている。

 月の氷の存在をめぐっては、京都大学や東北大学などの合同チームが今年5月、月の隕石の研究を通じて、水が蒸発することで生成される「モガナイト」と呼ばれる鉱物を発見したことから、月面の地下に大量の氷が埋蔵されている可能性を指摘していた。

2018年08月21日 12時28分
https://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/2/6/26103.html

NASAの月面鉱物観測機M3がとらえた月の南極と北極に分布する氷。太陽光が届くことはないクレーターの底の永久影と言われる部分に集中する。左は南極、右が北極(NASA)
https://www.hazardlab.jp/contents/post_info/2/6/1/26103/moon.png