メキシコ麻薬戦争の被害を告発するイベント「記憶の足跡」で展示中の、事件記事や行方不明者の名を刺しゅうしたハンカチ=29日午前、東京都渋谷区
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メキシコ麻薬戦争の被害を告発するイベント「記憶の足跡」で展示中の、行方不明になった人たちの家族の声を彫り込んだ靴=29日午前、東京都渋谷区
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 メキシコ麻薬戦争で行方不明になった人たちの家族の声を世界に届けようと、昨年欧州各国を回ってきた展示会「記憶の足跡」が、東京都渋谷区の「NHKふれあいホールギャラリー」で開かれている。今回は、国連が定めた30日の「強制失踪の被害者のための国際デー」に合わせた企画。9月2日まで開かれた後、9月4〜10日は京都市の「ひと・まち交流館 京都」へ移動。9月25〜28日には再び東京へ戻り、慶大日吉キャンパスで続けられる。

 2016年にメキシコ市で始まった展示は、メキシコの彫刻家アルフレド・カサノバ氏が呼び掛け、家族のメッセージが刻まれた靴が会場に並んでいる。靴は家族から提供してもらい、メッセージはカサノバ氏の工房で靴底に彫り込まれた。

 被害者を襲ったのは警察や軍であることも多い。「人権活動家の父は警察に逮捕された後、行方不明になった」「軍に拘束され、弟はいなくなった」「夫と息子を武装した部隊が家から連れていった」。救いを求める家族の言葉が並んでいる。

 最後の様子や捜索の手掛かりと共に「決して忘れない」「見つけるまで戦い続ける」と誓い、息子や娘への思いがつづられる。展示会を日本に招いた慶大非常勤講師(スペイン語)の山本昭代さんは「メンバーとメッセージの一つ一つを日本語に訳したが、短い文章に人生が凝縮されていて泣けてきた」と語る。

 行方不明事件が相次ぐメキシコでは、もう大きなニュースにもならない。数行の小さな記事をハンカチに刺しゅうで縫い込む運動がメキシコで続いており、会場の別の壁にはこうしたハンカチが並んでいる。東京でも山本さんらがここ数年、スペイン語の勉強を兼ねて集まっては、刺しゅうを行ってきた。

 会場の靴は50足。ハンカチは22枚。メキシコで起きている行方不明事件の膨大な記録の一端が示されている。

時事通信 2018/08/29-17:17
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