大阪府警富田林署から樋田淳也容疑者が逃走してから、3週間。

 大阪府警は3000人体制で大規模な捜査を展開するも、樋田容疑者の行方はわからず、迷走が続いている。

 そんな中、とうとう死者が出た。8月30日深夜に「服装など、樋田容疑者に似た男を見た」との通報があり、大阪市港区にパトカーが駆け付けたところ、急にUターンするなど、走り去ったバイクを発見。不審車両として、パトカーがバイクを追跡した。

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「パトカーが追跡中は『ついに樋田容疑者か』と幹部も大きな期待を寄せていた。しかし、まったく関係ない高校生で、年齢も違えば、顔も全然、似ていない。一番、恐れていたのがその関連で一般市民に被害が及ぶこと。今回、亡くなった高校生も確かに問題ですが、パトカーは必死で樋田かもしれないと追いかけた結果のこと。『ついに犠牲者か…』と幹部の顔はひきつり、お葬式のような雰囲気でした。(前出・捜査関係者)

 それにしても樋田容疑者は、なぜ、警察署という最も警備が厳重な場所から逃走できたのか。

 関係者に取材を重ねたところ、その生々しい状況が明らかになってきた。

 8月12日夜9時半ころだったという。富田林署で「おい、本当か? 署内を探せ」そんな声がして、騒然となったという。

 弁護士と面会後、面会室にいるはずの樋田容疑者がいない。留置場にも姿がない。

 当直責任者だった課長はなぜか、署内の捜索を優先させたという。

 だが、面会室で衝立のアクリル板が外れた様子からどこかに逃げたのは明らか。

 やっと非常ベルが鳴ったのが、午後9時43分。府警本部にも連絡が入ったが、

「署内の捜索で発見できず、それから10分ほどして、樋田が逃走したと本部に連絡してきた。だが最初は容疑者が取調室から逃げたという内容だったそうです。面会室から逃げたという内容ではなかった。おまけに、その時、富田林署の署長は夏休みで官舎にいなかった。あわてて、休暇中の自宅から駆け付けたそうです」(前出・捜査関係者)

 その後も富田林署、大阪府警は後手後手の対応だった。

 なぜか、緊急配備は富田林署と近隣の警察署、隣接する、奈良県や和歌山県に対してだった。

 だが、樋田容疑者は大阪市内でひったくり事件を起こしていたのだ。

 14日には、兵庫県尼崎市でも防犯カメラに樋田容疑者らしき人物が映っていた。

 大阪府松原市の樋田容疑者の実家には、今も24時間体制で大阪府警の捜査車両が止まっている。

 樋田容疑者の小学校、中学校時代の同級生はこう証言する。

「昔の同級生に警察は軒並み、連絡をとって『樋田を知らないか』と聞いています。けど、樋田は高校に入ってグレて、ワルさをするようになり、同級生はまったくと言っていいほど、知らない。『同級生に聞いてもダメですよ。ワル仲間に聞いた方がいい』と大阪府警の人にいったら『そっちも聞いているが、手がかりがない。とにかく何でもいいから教えてくれ』と悲壮感いっぱいでした」

 取材班は大阪府警が樋田容疑者の実家でない、あるマンションをマークしている様子を確認した。樋田容疑者がかつて警察の「お世話」になった時に親しくしていた“ワルさ”の仲間の立ち寄り先だ。

「警察の人が毎日のように来て、防犯カメラのデータを持っていきますよ。外で張り込んでいるようだし、見ているなら防犯カメラのデータなんて不要なのにね。警察の人は『念のために』とか話していましたが、あんな頼りない感じじゃとうてい捕まりそうもない気がしました」

 そのマンションのオーナーは、あきれた表情でこう語る。

 お盆休みも返上して、多くの捜査員を投入している大阪府警。他の捜査にも影響があるようで捜査関係者はこう嘆く。

「最初は大阪市内のひったくり事件でマスコミの目を引き付けて、実は兵庫県尼崎市や西宮市あたりを、懸命に捜索していた。樋田の刑務所仲間などの関係先ですぐにでも捕まるようか勢いでした。それが、まったくダメで、あちこちの影響が出ています。事件捜査するにも人がいなくてと嘆きが聞こえてきます。これだけ捜査しても、樋田容疑者の行方はしれない。もう、どっかで事件でも起こしてくれなければ無理じゃないかという声まであがる始末です」  

9/2(日) 21:47
AERA dot.
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