菅は細野の手からマイクをもぎ取った。右手にマイク、左手を腰に添え、立ったままで、演説を始めた。

「今、福島第一から撤退すれば、1号機から4号機、5、6号機まで全部爆発する。福島第一原発だけでなく、
福島第二原発も爆発する」

「日本の領土の半分が消えることになる。日本の国が成り立たなくなる。
何としても命がけで、この状況を抑え込まないといけない」

「撤退を黙って見過ごすわけにはいかない。日本が原発事故を自分で何もできないとなったとき、外国が、
アメリカもロシアも、何もしないでいるだろうか。何十日間、何百日間、放置するだろうか。自分たちがやる、
と言い出しかねない。それは日本が占領ということになる」

「君たちは当事者なんだぞ。命をかけてくれ。東電は逃げても、絶対に逃げ切れない。金がいくらかかかっても構わない。
日本がつぶれるかもしれないときに撤退はあり得ない。撤退したら東電は100%つぶれる」

「会長、社長も覚悟を決めてくれ。60歳以上の幹部は現地に行って死んだっていいとの覚悟でやってほしい。
おれだって行く。われわれがやるしかないんだ」「もう一度言う。撤退はありえない。撤退したら東電は必ずつぶれる」

10分間近く、菅は演説した。すさまじい形相だった