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トランプ氏、プエルトリコのハリケーン死者数を裏付けなく否定 民主党のせいに
2018/09/14 4時間前

昨年9月にカリブ海を襲ったハリケーン・マリアで2975人が死亡した米自治領プエルトリコの被害について、自治政府が公式発表した犠牲者数をドナルド・トランプ米大統領は13日、「3000人も死んでいない」、「民主党がやったことだ」と根拠を示さずツイートした。

トランプ大統領はツイッターで、「プエルトリコを直撃した2つのハリケーンで3000人も死んでいない。嵐が直撃したあとに自分が島を離れた時点で、死者は6人から18人くらいだった。時間がたってもそれほど増えなかった。それがずいぶん後になってから、本当に大きな人数を報告するようになった。3000人とか……」

「これは、僕がプエルトリコ再建のために何十億ドルも集めるのに成功していたとき、こちらの評判をできるだけ落とそうと民主党がやったことだ。理由はなんでも、たとえば老衰とか、誰かが死んだらそれだけでリストに足したんだ。ひどい政治だ。僕はプエルトリコが大好きだ!」

米国では現在、「カテゴリー2」のハリケーン・フローレンスが東部海岸に接近している。

公式死者数の根拠は

米政府は、ハリケーン・マリアの被害者数を少なく発表してきたとかねてから批判されていた。8月28日までは、崩れる建物の下敷きになったり、溺死したり、飛んでくるがれきにあたるなど、ハリケーンによる直接的な衝撃で死亡した人のみを数えていたため、公式死者数は64人だった。

しかし、米ハーバード大学は今年5月、ハリケーンによる死者は4600人以上だったとする試算を発表。停電や交通網の破壊による医療行為の中断が、多数の死亡につながったと指摘した。

米ジョージ・ワシントン大学が7月に結果を発表した調査は、プエルトリコのリカルド・ロッセロ知事が委託したもので、自治政府は調査結果を公式数値として受け入れている。ハリケーン直撃から半年の間に、停電や清潔な水の不足、医療レベルの悪化などが原因で死亡した人も含まれている。ハリケーン後、プエルトリコでは停電が何度も繰り返されたため、糖尿病や敗血症などによる死者も増えた。

大学の調査はさらに、死因を正しく自然災害と関連づけるために必要な認識が、多くの医療者に欠けていたと指摘した。

調査は、昨年9月半ばから今年2月半ばまでの死体検案書や他地域の統計をもとに、死者数を数えた。

プエルトリコからの反応は

被災当初からトランプ政権の対応を厳しく非難してきた中央都市サンフアンのカルメン・ユーリン・クルス市長は、「トランプさん、いくらツイートで私たちを威圧しようとしても、私たちは知っている。自分たちの命が大事だと」とツイートした。

「私たちの自尊心を、あなたに奪われるなどあり得ない。恥を知りなさい!」と市長は続けた。

トランプ氏は11日に、自分たちのプエルトリコ対応を「素晴らしかった」と自画自賛していた。それをクルス市長は、「死者3000人が成功だったと思うなら、どうしようもない。神様、助けてください」とツイートし、今回の大統領発言は「泣きっ面に蜂」だと批判していた。

市長は8月末に公式死者数2975人が発表された際には、連邦政府のプエルトリコ対応は「トランプ政権の汚点」だと罵倒した。

自治政府のリカルド・ロッセロ知事は11日夜に声明で、マリアは「現代のプエルトリコにとって史上最悪の自然災害だった。基本インフラが壊滅し、数千人が死亡し、多くが今も苦しんでいる」と述べた。さらに、「植民地と連邦政府の関係が『成功』していると呼べるなど、あり得ない。合衆国の米国人が享受する不可譲な権利の一部が、プエルトリコ人には認められていないからだ」と反発した。

プエルトリコは米国に未編入の自治連邦区。住民330万人は米国籍を持つが、大統領選の投票権がない。一方で、連邦所得税の納税義務もない。米ジョージ・ワシントン大学調査によると、人口330万人のうち、約8%がハリケーン以降に島を離れた。

米政界の反応は

トランプ氏の今回のツイートについては、与党・共和党内からも批判の声が上がっている。

フロリダ州選出のイレアナ・ロス=レティネン下院議員(今年で政界引退)は、大統領のツイートを「頭がくらくらする」ものだと呼んだ。
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