聖路加国際病院
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 聖路加国際病院(東京都中央区)で、宗教的なケアを担う40代の牧師の男が患者への強制わいせつ容疑で書類送検された。聖職者によるわいせつ行為やセクシュアルハラスメントは、過去にも問題となっている。刑事事件として立件されるケースもあるが、宗教的な儀式や個人的なカウンセリングなど密室でのやりとりは立証のハードルが高く、絶対的な地位にある聖職者の告発にためらう被害者も多い。専門家は「被害者が1人で悩みを抱え込み、被害が潜在化しやすい」と指摘する。

 平成18年、信者の少女らに乱暴した罪に問われた男性牧師に対し、京都地裁が懲役20年の判決を言い渡した。裁判では教団の絶対者として君臨していた男性牧師が「逆らえば地獄に落ちる」などと言って長期間にわたって繰り返し7人の少女らを乱暴していたことが明らかになった。

 金沢地裁では18年、供養と称して女性参拝者の体を触るなどしたとして、強制わいせつ罪に問われた男性住職が執行猶予付きの有罪判決を受けている。

 男性牧師が女性信者1人に対する準強姦罪に問われた23年の水戸地裁判決では、「被害者の証言に信用性がない」などとして無罪が言い渡された。一方、同牧師の度重なるセクハラ行為を訴え、複数の信者が損害賠償を求めた民事訴訟では、28年、最高裁で大部分のセクハラ行為を認める判決が確定している。

 性被害やセクハラの問題に詳しい広島大の北仲千里准教授(社会学)は「精神的な影響力や尊敬心などを背景にした聖職者による性暴力やハラスメントでは、力尽くでなくても被害者がマインドコントロールされ、拒絶できなくなってしまう」と指摘。刑事事件では、加害者側が「合意があった」などと否認することもあるという。被害者がすぐには被害を訴え出ることができず、「時間がたってから打ち明けるケースも多い」としている。

 一般企業など事業主のセクハラ対策は男女雇用機会均等法で義務づけられているが、聖職者と信徒などのコミュニティーはその限りでないといい、北仲准教授は「相談窓口の設置や聖職者への指導などの対策は、各団体の自主的な取り組みに任されているのが現状。法規制などの対応が求められる」と訴える。

産経新聞 2018.9.14 17:30
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