批判を浴びるドイツ連邦憲法擁護庁のマーセン長官=ロイター
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 【ベルリン=石川潤】ドイツの情報機関、連邦憲法擁護庁のマーセン長官に13日、イスラム過激派などに関する公表前の情報を極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)に提供していた疑惑が浮上した。公共放送のARDが伝えた。連立与党の一角であるドイツ社会民主党(SPD)などが辞任を求めており、メルケル政権への打撃は避けられない情勢だ。

 ARDによると、マーセン氏はAfDのブラントナー議員と6月13日に会談し、5週間後に公表されるリポートの内容を漏らした。マーセン氏はドイツメディアなどに対し、職務上あらゆる政党の政治家と定期的に接触しており、問題はないと反論している。

 連邦憲法擁護庁は極左や極右、イスラム過激派などの活動を調査する機関だけに、マーセン氏とAfDの近さを危ぶむ声がある。長官はつい最近も、ドイツ東部で8月に起きた極右による「外国人狩り」の事実を否定するような発言をして、強い批判を浴びていた。与野党を問わず資質を疑う声が広がっている。

 こうした事態を受け、連立与党のキリスト教民主同盟(CDU)党首のメルケル首相、キリスト教社会同盟(CSU)党首のゼーホーファー内相、SPDのナーレス党首が13日、会談した。

 辞任を求めるSPDに対して、連邦憲法擁護庁を管轄するゼーホーファー氏は長官を擁護する姿勢を示したものとみられる。会談では長官の進退などについての結論は出ず、18日に再び議論するもようだ。

 メルケル政権は7月、ドイツ国内に入国しようとする難民の扱いで首相と内相が対立し、政権崩壊の瀬戸際まで追い込まれたばかり。政権内のきしみが再び強まれば、メルケル氏の求心力が一段と低下しかねない。

日本経済新聞 2018/9/14 10:02
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