北海道の地震による停電の影響で、北海道電力泊原発(泊村)の外部電源が一時喪失した問題で、立地と周辺の計四町村が当時、電源喪失の事実を防災無線や広報車を使って住民に周知していなかったことが分かった。北海道電と道、四町村が締結する安全協定では、四町村が今回のケースを住民に周知する義務はなく、道は「問題はなかった」と説明する。だが、停電の解消後にニュースで事実を知った住民からは不満や懸念の声が上がっている。 

 泊村は震度2だったが、泊原発は六日午前三時二十五分に外部電源を全て喪失。同原発は現在停止中で、1〜3号機の原子炉に核燃料はないが、プールには使用済み核燃料が計千五百二十七体あり、七日間の発電が可能な非常用発電機六台を使って冷却を続けた。

 東京電力福島第一原発事故では、外部電源を喪失後に非常用電源も津波で失って「全電源喪失」に。核燃料を冷却できなくなり、過酷事故に発展した。泊原発は約九時間半後に外部電源が復旧して設備などに損傷はなかったが、復旧が長引けば危険な状態に陥る可能性もあった。

 今回、安全協定に基づいて北海道電は道と四町村に原発の電源喪失の事実を通報。泊村、共和町、岩内町、神恵内(かもえない)村は地震当日、地震の発生と停電の状況は防災無線や広報車を使って周知したが、電源喪失の情報は流さなかった。

 道によると、緊急事態の通報・公表基準は安全協定で定められている。放射能漏れや原子炉の停止が必要な事態などの場合は、四町村が住民に周知する義務があるが、外部電源の喪失は該当しなかった。

 泊村の担当者は「状況に応じて独自に情報を流す場合もあるが、今回は非常用電源も問題なく作動しており、流す必要はないと判断した」と話す。道の担当者も「非常用電源や発電車など二重三重の備えができていた。安全性に問題はなく、今回は各町村が住民に周知しなくても支障はなかった」と強調する。

 一方、北海道電や原子力規制庁は電源喪失の事実をサイトや会見で発表し、道もサイトで公表していた。ただ、停電で住民はテレビを見られず、ネットを見る時間も限られた。地元住民は「大事なことを知らせない町に不信感を覚えた」「いざというときに逃げ遅れる」と憤っている。

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