京都大大学院生の森本千恵さん(26)が、有望な若手女性研究者に贈られる「ロレアル・ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を受賞した。遠い血縁関係を識別できる新手法を開発した業績が評価された。森本さんは「手掛かりの少ない孤独死や災害死などの身元確認で生かしてほしい」と話している。

 DNAは、人間に必要なたんぱく質を作る情報を伝える「塩基」が連なったもので、DNA鑑定は塩基の並び方の違いから個人を識別する。現場に残されたDNAから容疑者を特定する犯罪捜査だけでなく、親子関係の有無を調べる血縁鑑定にも用いられている。

 森本さんは京大医学部人間健康科学科でDNA検査法を学んだ。卒業後の進路を考える際、東日本大震災で身元不明の遺体が多いことを知り、「より深くDNA鑑定技術を研究したい」と、大学院で法医学を専攻することにした。

 DNAは親から子へと引き継がれるため、血縁が近いほど同じDNA配列が増えるという。森本さんらは、同じDNA配列を共有する部分の長さに注目し、解析した。血縁関係の確率も算出する。

 これまでの方法では、親子間で95・5%、きょうだい間でも72・3%だった的中率は、新手法で99・9%以上に向上。他人と判別できなかったおじやおい、いとこのほか、6親等のまたいとこまで血縁の有無が鑑別できる。

 遠い親類のDNAが役立つため、縁故者や遺物が少ない孤独死者や大災害の犠牲者の人定、戦没者の遺骨鑑定での活用が期待される。研究成果は米科学誌「プロスワン」(電子版)などに掲載された。

 DNA配列の「長さ」に着目したのは、研究室のメンバーや異分野の指導者らとの議論にヒントを得たからといい、「違う視点を持つ人の助言で突破できた。他人との意見交換の大切さを実感した」と振り返る。

 2005年創設の同賞は、これまで生命・物質科学の研究者ら約50人が受賞。森本さんは「諸先輩方の様々な生き方に刺激を受けながら、研究を長く続けていきたい」と目標を語った。(川崎陽子)

https://www.yomiuri.co.jp/science/20180927-OYT1T50067.html