群衆は、これ(捕らえた部落民)を加茂川の辺なる火葬場の傍なる一陣の内に押し入れ、
最初に半之丞(被害者の名前)を引き出し、これを水溜の中に突き落とし、
悲鳴を挙ぐるを用捨なく、槍にて芋刺しに串貫ぬき、かつ石を投げつけてこれを殺したり。
それにより順次に同一方法を用いて5人を殺し、最後の6人目なる松田治三郎に至るや、
隙を見て逃亡せんとし、今一歩にて加茂川に飛びいらんとするところを、
後より石を擶(う)ち、これを惨殺せり。
猛り切ったる群衆は、猶これにあきたらず、同部落民の家に火を放ち、
半之丞の居宅ならびに土蔵三棟、納屋一棟を焼き払いたるを手初めに、
火はしだいに次から次へ焼き移り、遂に全部落百余戸を灰燼に帰せしめ、
また悲鳴を挙げて逃げ迷う老少婦女を捕へて、
背に藁束(わらたば)を縛し、これに火を放ちて焼死せしむるなど、すこぶる残惨を極めたり。