>>590 つづき

1.4免疫系への影響

カンナビノイドには免疫抑制作用と抗炎症作用があるという概念を支持する細胞や
動物に関する研究からの豊富なデータがある。

しかし、これらの研究は抗炎症効果を支持しているが、ヒトの研究からのデータは限られる。

例えば、20人の大麻使用者の1つの研究は、コントロールと比較してインターロイキン(IL)-17
(前炎症性サイトカイン)およびIL-10(抗炎症性サイトカイン)のCD4 + T細胞濃度が低いことを示した。

免疫不全のHIV患者における大麻の効果を評価する研究では、データは限られているものの、
免疫機能および感染の感受性に臨床的に有意な有害作用は示されていない。

不法かつ規制されていない大麻は、時折、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、
大腸菌(Escherichia coli)およびアスペルギルス(Aspergillus)を含む様々な微生物に
よって汚染されることがある。

アスペルギルス(Aspergillus)は肺アスペルギルス症を引き起こす可能性のある真菌であり、
免疫不全患者に潜在的に致命的である。 大麻使用者ではアスペルギルス症の多くの
症例が報告されている。

オランダのような政府規制の大麻供給がある国では、この問題を解決するために、
大麻の花穂製品をガンマ線照射で処理して薬学的に許容されるレベルまで
微生物汚染を除去している。

1.5変異原性および癌

多くの前臨床文献は、カンナビノイドが癌細胞増殖を減少させ、これらの細胞における
アポトーシスを誘導し、多数の癌細胞タイプにおける癌細胞移動および血管新生を
阻害することを示している。

大麻使用は肺、頭頸部のがんのリスクを増加させないという穏やかな疫学的証拠がある。

2159人の肺がん患者と2985人の対照に関する6件の症例対照試験の系統的レビューでは、
大麻喫煙(1日1ジョイント以上)が肺癌リスクを増加させる統計的に有意ではない傾向が見られた。

頭頸部がん患者5732例と8199人の対照者を比較した9件の症例対照研究の系統的レビューと、
メタアナリシスで、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌および上消化器、鼻咽頭および口腔癌を含む。

カナビス喫煙は、精巣癌のリスクを2.5倍(22-24)増加させることが報告されている。

(訳者注:ただし、精巣腫瘍の発症率は人口10万人あたり1-2人と稀であるため、
2倍程度増えることが真実としても、男性人口の全てが大麻を喫煙した場合、
10万人あたり1-2人程度増える可能性があるということだが、これは実際の
大きなリスクとは考えにくい)

熱分解された植物材料は一般的の発がん物質を含んでいるため、大麻使用と
疫学研究で報告された癌との関連は喫煙行為によって混乱する。

また、より安全な大麻吸収技術の開発は、喫煙経路を避けることによって、ガンのリスクを
リスクを軽減する可能性がある。

(つづき)