こうした危機の当初、日本はひどい目に遭うだろう。
輸出が急減して景気は急落し、就職氷河期が再来。資産の半分を株で運用している年金運用は莫大な含み損を抱え、支給への不安が高まる。
「政府の指令で経済を運営せよ」「金持ちの資産を分配せよ」などの声が満ち、ポピュリストの野党が政権を取るかもしれない。

90年、筆者はソ連の計画経済が音を立てて崩壊していく様を、外交官として現地で見ていた。
だから、言う。
指令経済や国家資本主義への幼稚な期待はやめてほしい。
人間という予測不能な生物が集まってつくる経済を、計画や指令で動かせるはずがない、と。
(ニューズウィーク 2018年09月25日号)より