【企業買収】中国企業によるM&A、EUが規制強化の動き 問われる日本の対応

 中国企業が日本企業を対象に行う買収や資本参加は、米国やEUと比べて、まだ少ない。

 日本貿易振興機構(JETRO)が昨年12月末にまとめた調査では、15年末で、中国と中国企業の金融子会社が多い香港を合わせた直接投資残高は、米国が259億ドル(約2兆8490億円)、EUで730億ドル(約8兆300億円)、日本は約84億ドル(約9240億円)だと示された。

 また、財務省の対内・対外直接投資フローによる、中国の対日直接投資フロー(ネット)は2010年の過去最高額の276億円となった後、11年89億円、12年57億円と減少傾向にあった
13年には138億円まで回復した。14年は前年比で2倍増の351億円となった。15年には107億円と再び大幅に減少した。

 JETROやロイターによると、中国企業の対日企業買収(M&A)件数は、10年17件、11年7件、12年は9件、13年2件。

 日本国内外企業M&A情報サイト「マールオンライン」の統計では、中国企業による対日M&Aは、16年前年比で45.7%増で、過去最多の51件となった。この年、中国企業の対日M&Aでは、大型案件が目立った。

中国の家電メーカー美的集団が、投機規模514億円で東京ライフスタイルを買収した。ネット大手テンセント(騰訊)は、ソフトバンク傘下のゲーム会社のスーパーセルの株式84.3%を86億ドルで取得した。

 日本は外資参入への規制が非常に少ない。米国の外国投資を審査・規制する「外国投資委員(CFIUS)」のような政府機関がなく、また外国投資規制強化の法整備も行われていない。

 現状では、航空法や放送法など個別の法令により、一部の業種において外国企業に対して投資規制はある。しかし「航空機・武器・原子力・宇宙開発などの産業分野への投資は、事前に国土交通省や財務省など関連政府機関に届出を提出する必要がある」程度に止まっている。

 欧米諸国で中国企業による資本参入規制を強化している今、日本が国内先端技術やノウハウ保護の観点から、規制強化に動き出すかに注目したい。