為替条項を巡っては、日本など11カ国による環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加国も、
自国の輸出を有利にする通貨安誘導の回避で合意している。
ただ、主要20カ国・地域(G20)などでの合意と同様、各国当局間の協調が目的で、
具体的な罰則や報復措置の規定がなく、
参加国に金融・通貨政策の変更を迫る強制力はない。
トランプ米政権の下で見直された韓国との自由貿易協定(FTA)にも為替条項が導入されたが、
「強制力は伴わない」(ホワイトハウス高官)ことで落ち着いた。

 ところが、トランプ政権は9月末、
メキシコ、カナダとの間で妥結した新NAFTAで強制力のある為替条項の導入に成功した。
具体的には、参加3カ国は、相手国の通貨切り下げが疑われる場合、
紛争解決を行う小委員会(パネル)に審理を要請でき、
不当な為替操作が認定されると、報復関税などの対抗措置を取れる。
不適切な通貨政策かどうかは、パネルの判断に委ねられるものの、
審理が要請されただけで金融市場が反応しかねず、実質的に、
日銀による金融政策や財務省が実施する為替介入などが縛られる恐れがある。

 トランプ政権の狙いはもともと、
為替問題で対立のないメキシコやカナダとの新NAFTAに為替条項を導入して「ひな型」を作ったうえで、
アジア各国との交渉に臨むことにあるとされる。