そのまま地中に…
あの原発事故から7年半…。

大手ゼネコン清水建設が国から請け負った除染事業で現場作業員が不法投棄容疑で立件された。
福島県警が18日、書類送検したのは清水建設の下請け除染企業A社(福島県いわき市)の現場作業員など3人。
福島県大熊町で続く、家屋の除染解体工事(帰還困難区域内等)で、放射性物質が付着した廃棄物(瓦礫等)計283キロを指定の仮置場に運ばず、重機でそのまま近くの地中に埋めた放射性物質汚染対処法違反の疑いだ。

■「なぜ」不法投棄は起きたのか?

関与した作業員は、不法投棄の理由について、細かい廃棄物を仮置き場に運ぶには、人手と労力がかかるため、下請け除染企業A社の上司から「とりあえず小さいものは埋めてしまえ」と“指示”されたとFNNに話した。
しかし、この上司は県警の事情聴取に指示を否定。上司は立件されていない。

この作業員はA社の“利益体質”について次のように指摘する。
「どんな形でもバレなければ、売上をあげれば評価されるような考えが皆あったと思う」

■「除染マネー」…43億円の巨額役員報酬

この下請け除染企業A社は、代表ら役員が巨額の報酬を得ていたことがFNNの取材で判明している。
A社の1年間(2016年1月〜12月)の驚きの利益構造だ。

【清水建設が国・自治体から受注した除染・関連事業等の下請けにより】
売り上げ(営業収益) =約105億円
利益(売上総利益)=約56億円
役員報酬(代表ら役員)=約43億円

注目すべきはこの巨額の役員報酬の原資だ。
除染費用は原則、東京電力に請求することになっているが、税金や電気料金が充てられる可能性が高く、結局は“国民が負担”することになる。
つまり “国民の金”の半額近くが除染企業の“フトコロ”に入っていたのだ。

■「打つ手」がない環境省

“国民の金”が業者のフトコロに入る「除染マネー」の仕組みが許されるのか。

元請けの清水建設は、「個別の取引先の業績等については把握してないのでコメントは差し控える」とコメント。
清水建設と下請け企業は民間同士で、取引内容を公表する必要はないのだ。

発注元の環境省も「民間企業の内容については関知していません」とコメント。
環境省でさえ、現在の仕組みでは、民間同士の取引なので「打つ手」がないのだ。

ゼネコン幹部との“癒着”
清水建設幹部と、下請け除染企業A社には“癒着”があったことも判明している。

除染事業を統括していた清水建設の執行役員が、自分の実家の草むしりと雪かきをA社の除染作業員に無償でさせていたことが、FNNの取材で発覚し辞職している。

取材結果から、冒頭にある作業員の不法投棄について清水建設の関与はない。
しかし、下請け企業が巨額の役員報酬を得たことについては、癒着関係が影響したのか、していないのか分かっていないし、確認する手段がないのだ。

■「ブラックボックス」をチェックする仕組みを

つまり“除染マネー”の行方を「民間同士の取引」という「ブラックボックス」により、国や国民などがチェックできない仕組み自体に問題があるのだ。
今こそ、国はこの仕組みを見直すべきではないのか。

なお、清水建設は東日本大震災後、約30件もの国と自治体の復興事業を担ってきた。
これまでの取材で、多くの社員や作業員が、単身赴任で家族にもなかなか会えずに早朝から厳しい環境の中で黙々と働く姿を目撃している。
彼らが復興に多大な貢献をしてきたことが間違いないことも付記したい。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181022-00010005-fnnprimev-soci